理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 836
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生活環境支援系理学療法
荷重計測用杖の制作
*遠近 高明津田 勇人津守 邦彦
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キーワード: , 長さ, 荷重計測
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抄録

【目的】一般的に杖の長さは肘屈曲30°や大転子の高さで調整される。しかし、臨床経験5年以上の理学療法士ではこれらの方法にとらわれず、患者にあった高さで調整しているという報告もみられ、本当に良い杖の長さとはどのようなものか疑問に思った。そこで今回、これらの疑問を解消するため、杖の長さ調節が簡単に行え、かつ杖の握りの形状も一部変換可能で、荷重量が計測可能な杖を製作した。今回製作した杖の紹介と今後の研究の方向性について報告する。

【方法】計測用杖には登山用の伸縮式でショックアブソーバーのついた杖を使用した。杖の圧力計測装置にはポテンションメーターの方式を使用しショックアブソーバーの歪みを利用した。可変抵抗器を5ボルトの直流安定電源に接続して一定の電流を流すことで、ポテンションメーターの摺動片の変位に比例した電圧を外部に出力できる。出力電源はマルチテレメーターシステム(日本光電社製)を経由してMac Lab / 8sに記録されるようにした。

【結果】計測装置のテストとして杖を押す力に比例して、電気的な出力が得られるか確認した。計測装置と接続した杖を秤量100kgのヘルスメーターに乗せ、垂直方向に押し下げ順次に荷重を変化させ電気出力を計測した。その結果、荷重量と電気的出力には直線関係が保たれており、この計測用杖は杖歩行中の荷重量を計測しえるものであった。また、杖の長さは最小で66cm、最大で120cmまでの間で数mm単位で長さ調整が可能であり、握り手部分を金剛杖用の真っ直ぐな握り手に変換すると最大135cmまでの長さで調整が可能であった。

【考察】これまでの報告をみると、杖の荷重量研究で使用されていた計測用杖は長さや形、握り手の形状も変化できない物ばかりであり、有線以外では床反力計のように高価な計測機器となり手軽に使用できるものでは無かった。今回、著者らが製作した杖は有線ではあるが伸縮性に優れており、様々な身長の方に対応が可能であり、杖の握り部分の形状も変更が可能である。また、テレメーターシステムの使用場所を移動すればスロープや階段の歩行時における杖荷重量の計測も可能であり、計測条件が多様に変化させられるため非常に簡単で便利である。今後は杖の長さ、肘関節屈曲角度の違いによる平地での杖歩行の荷重量の違い、階段昇降時やスロープでの歩行時の分析などを行っていき、個人個人にあった杖の長さとはどのようなものか検証していきたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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