抄録
【はじめに】
近年、医療・福祉分野では、腰痛など労働衛生上の問題がクローズアップされるようになり、様々な福祉機器の開発や人間工学的配慮が成されるようになってきた。しかし、養護学校教員に関しては、その対応が未だ不十分な状態にある。我々は第44回近畿理学療法学術集会において、滋賀県下養護学校教員の腰痛実態調査から、校種によらず腰痛は多発していること、腰痛は徐々に引き起こされ、疲労の蓄積とともに1学期半ばに発症しやすいこと、一概に労働時間や児童・生徒と接する時間など量的評価のみでは判断できず、質的評価を行うべきであることを報告した。そこで今回、校種別にどのような環境下で実務遂行成されているのか分析し、腰痛との関連性について検討したので報告する。
【対象と方法】
滋賀県下の養護学校教員691名を対象とし、無記名質問紙法にてアンケート調査を行った。調査内容は、腰痛の有無、所属校種、担当する児童の状況、心身の疲労状態とした。調査期間は、2004年2月下旬から3月下旬とした。統計解析にはSPSSを、比率の差の検討にはχ2検定を用い、危険率5%未満をもって有意とした。
【結果】
アンケート回収率は肢体校59.7%、知的校40.6%、併設校54.9%であった。腰痛有訴率は肢体校79.5%、知的校68.8%、併設校73.5%と校種間で有意差は認められなかった。肉体疲労は肢体校79.5%、知的校91.7%、併設校88.3%とすべての校種で高率を占めていたが有意差は認められなかった。精神疲労は肢体校87.2%、併設校82.2%に対し、知的校91.7%と有意に高かった(p<0.05)。担当する児童の状況は、肢体校では学習面や移動・移乗面、食事面などで抱き抱えによる介助を要する者が多く、重度の変形拘縮を有する者も多かったが、腰痛の有無で担当児童の状況に有意差は認められなかった。知的校では学習・移動・移乗面などで突発行動を起こす者が多く、ウロウロと立ち歩くために介助を要する児童を担当している者が、腰痛無自覚者26.7%に対し、腰痛有訴者で57.6%と多かった(p<0.05)。併設校では、腰痛の有無により担当する児童の身体ならびに知的の両面で顕著な有意差は認められなかった。
【考察】
腰痛有訴率は校種間で有意差はなく、肉体ならびに精神の疲労も高率を占めており、養護学校では疲労性腰痛が引き起こされていると考える。肢体校では、腰痛の有無に関係なく担当する児童の状況が同様であったことから、腰痛有訴者も無自覚者と同等の働き方をしている可能性が窺える。知的校では精神疲労が有意に高く、児童の突発行動に対する精神的緊張が強いられていると考える。このように、各校種で疲労性腰痛を引き起こす要因には違いがあることから、理学療法士などの専門職により、さらに質的調査を重ねる必要が示唆された。