抄録
【はじめに】頸髄損傷者のADLを考える中で、車椅子(以下W/C)-bed間の移乗動作は基本となる。この動作を獲得できるか否かが、更衣・排泄・入浴動作に繋がると言っても過言ではない。近年当センターにおいては、入所者の残存機能レベルが重度化傾向にあること、また受傷から入所までの期間が短縮傾向にあることにより、移乗動作未獲得の状態での入所が増加してきている。そこで以下のような調査、検討を行ったので報告する。
【対象と方法】対象は1994年4月1日から2004年3月31日の10年間に当センターに在籍していた外傷性頸髄損傷者217例(男性192例、女性25例、入所時年齢28.1±9.1歳、Frankel分類A・B)である。方法は、当センターで全入所者に対し定期的に実施する評価に基づき、Zancolli分類C4~C8Bの各レベル別にW/C→bed、bed→W/Cの移乗動作達成率(以下達成率)、方法、入所~自立の期間(以下訓練期間)、補助具の使用の有無及び種類を調査した。なおZancolli分類で左右差のある場合は機能良好側を採用し、方法及び補助具の自立後の変更は考慮せず、最初に自立扱いになった時のものとした。
【結果】達成率と訓練期間は以下の通りである(括弧内は訓練期間)。C4は全員介助、C5AはW/C→bedのみ自立で8.3%(33ヶ月)、C5BはW/C→bedで47.4%(10.3±5.5ヶ月)、bed→W/Cで42.1%(12.9±7.5ヶ月)、C6AはW/C→bedで84.6%(14.0±9.5ヶ月)、bed→W/Cで80.8%(15.9±11.5ヶ月)、C6B1はW/C→bedで98.7%(10.7±11.2ヶ月)、bed→W/Cで93.3%(10.9±11.1ヶ月)、C6B2はW/C→bedで94.4%(4.8±4.8ヶ月)、bed→W/Cで91.7%(5.2±4.4ヶ月)、C6B3はW/C→bedで100%(14.9±14.4ヶ月)、bed→W/Cで96.9%(18.3±13.8ヶ月)、C7A以下は全員自立だった。方法はC5A~C6B1で全て直角移乗、C6B2以下で横移乗例が出てくる。代表的補助具としてボード、頭受け台、紐が挙げられ、複数使用例もいる。約30%が不明だが、ボードはC6B3以上、頭受け台はC6B2以上、紐はC6B1以上で使用されていた。
【考察】達成率をまとめるとC5Bで40%以上、C6Aで80%以上、C6B1以下では90%以上となる。C5Bの全自立例が両側C5Bであり、動作達成の可否にあたって注目すべき点である。またC6Aの介助例をみると5例中3例が訓練中であり、今後達成率が90%を越える可能性がある。共通してW/C→bedに比較してbed→W/Cの達成率が低いのは、直角移乗での後方移動困難が原因と思われる。補助具では、1998年を境にmodular type のW/Cが増えてきている点と、既製のボードを備品購入したことにより、直角移乗例でのボード使用が増加傾向にある。また側方板付き大型ボード導入により、C5A、C5Bの達成率向上が期待される。しかし環境整備だけでなく、残存機能向上へのアプローチも重要である。