抄録
【はじめに】神経筋電気刺激は、理学療法分野において筋力強化や疼痛軽減などを目的に用いられており、その効果に関する報告も多い。この中で、電気刺激はタイプ2線維を選択的に収縮できることが知られている。本研究の目的は、大腿四頭筋に対する神経筋電気刺激が筋線維タイプに及ぼす即時効果について検証することである。
【方法】対象は健常男性10名(平均年齢24.3±2.1歳)とした。測定筋は右側の内側広筋(VM)、外側広筋(VL)、大腿直筋(RF)とした。まずMUSCULATOR GT-30を用い、膝関節60度屈曲位にて膝伸展最大等尺性収縮における最大筋力(MVC)を測定した。次に30%および60%MVCでの膝伸展等尺性収縮を、電気刺激の前後に行った。尚、30%および60%MVCの課題は日を変えて測定を行った。電気刺激にはプロテクノEMS(アルファメディカル)を使用した。電極の大きさは長さ14.5cm、幅3.5cmであり、筋電図電極を遠位および近位にて挟むように大腿前面に貼付した。また刺激時間は10分、収縮強度は被験者が疼痛や不快感がない最大の強度とした。解析にはBIMUTAS2を使用した。各測定時の筋電図波形の中央2秒間を用い、積分値(IEMG)および周波数解析から中央値(MdPF)を算出した。次に、各筋のMVC時のIEMGおよびMdPFを基準に各課題を正規化し、%IEMG、%MdPFを求めた。統計学的処理としてWilcoxonの符号付順位検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果・考察】30%MVCにて、%IEMGではVLが有意に高値を示した(p=.02)。またVMでは10例中8例に増加傾向がみられた(p=.06)。%MdPFにおいてもVMでは10例中8例に増加傾向がみられた(p=.07)。しかし60%MVCでは、ずべての筋において著変を認めなかった。このことから低い収縮強度時にVMの%MdPFは高まる傾向を示した。
一般的にVMの筋線維組成はタイプ1線維を、VLおよびRFではタイプ2線維を多く含んでいると言われている。また筋電図周波数解析では、VMは収縮強度の増加によって%MdPFが高まり、RFでは収縮強度が高まっても%MdPFに影響を及ぼしにくいことが報告されている。つまりVMは低い収縮強度にてタイプ1線維の活動する割合が高いと言える。一方、電気刺激はタイプ2線維の収縮に有用であることが報告されている。このことから今回のVMに対する電気刺激により、低い収縮強度時においてもタイプ2線維が収縮する割合は高まめられたと推察される。以上のことから、電気刺激によりタイプ2線維の促通する手段となりうることが示唆された。