抄録
【はじめに】
1998年に日本褥瘡学会が発足し、2002年から褥瘡対策未実施減算が診療報酬制度に組み込まれ、2004年の日本理学療法士全国研修会でも褥瘡がテーマとして取り上げられた。褥瘡予防は当然だが、発生した褥瘡に対して理学療法士がいかに関与するか問われている。当院も褥瘡対策委員会が発足し、理学療法士がその一員として参加している。今回、仙骨部褥瘡に対する直線偏光近赤外線療法の有効性について、前向き症例-対照研究にて検討したので報告する。
【対象と方法】
対象は2003年4月から2004年11月の間に当院入院、NPUAPの分類ステージ3の仙骨部褥瘡を有する患者17名(年齢73.8±9.4歳)である。看護ケアのみを実施した9名(年齢72.2±10.6歳)を対照群とし、看護ケアに加え直線偏光近赤外線療法(東京医研株式会社製スーパーライザーHA2200、以下SL)を実施した8名(年齢75.6±8.2歳)を実施群とした。SLの照射条件は、出力80%、照射時間10~15分、照射頻度週3回、照射距離5mm、ブローブBとした。治療終了は退院時とした。褥瘡評価は、深さ・滲出液・大きさ・炎症/感染・肉芽形成・壊死組織・ポケットの7項目から構成され、28点(最重度)から0点(完治)でスコア化される「DESIGN」の経過評価スケールを使用した。統計学的検討には統計解析ソフト「Stats View5.0」を使用し、Wilcoxonの符合付順位検定、Mann-WhitneyのU検定、χ2検定により対照群と実施群の治療効果を比較した。本研究はヘルシンンキ宣言を遵守し、家族・本人へ説明を行い、参加同意を得た。
【結果】
治療期間は対照群53.1±10.9日、実施群38.9±17.5日であった(P>0.05)。治療開始時、終了時を比較すると、対照群では7項目全てにおいて有意差が認められなかった(P>0.05)が、実施群では全ての項目で有意差が認められた(P<0.05)。また、治療開始時、終了時の合計スコアは対照群で13.7±2.6点、13.4±3.2点であり(P>0.05)、実施群で17.5±4.2点、11.1±5.2点と有意な改善であった(P<0.05)。また、「DESIGN」の各項目毎に1ランク以上改善した「良好」と不変あるいは悪化した「不良」の割合を対照・実施群で比較すると、大きさ、ポケット以外は有意に良好群が実施群で多いことが示された(χ2>4.6、p<0.05)。
【考察】
今回、定量的解析と定性的解析を行い、SL実施が看護ケアのみの対照群と比較して、褥創治癒の促進を促す有効な手段であることが示唆された。この創傷治癒の機序としては、SL照射による深部血流量の増加が推測されるが、今後の基礎研究による解明が待たれるところである。今後は症例数を増やすとともに、多施設での臨床研究が必要と考える。