理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 92
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教育・管理系理学療法
理学療法士・作業療法士養成専門学校における教養教育について
―「教養」に対する教職員の意識調査―
*佐藤 公博信太 雅洋三宅 環米山 喜久治
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抄録

【背景と目的】
 理学療法士(PT)・作業療法士(OT)の養成校は増加の一途をたどり、近い将来には量的な過剰供給さらには質的な低下が懸念されている。本学院は昼間部3年制・夜間部4年制の専門学校で、入学者の年齢・社会的背景は多様性を持っている。最近の臨床実習指導者(SV)会議やSV研修会において、現場のSVから学生の基礎知識・技術に関する指摘は減少傾向にある一方で、現役高校生・社会人入学者に関わらず一般社会常識の欠如や人間的未成熟に関することなど情意面に関する指摘が増加傾向にある。
 本研究の目的は、このような状況下で、臨床現場で求められる情意面の本質について、教職員がどのように考えているのかを「教養」という概念に注目し、本学院の教職員の教養に対する意識の実情を明らかにすることである。この結果は、実際に現在の臨床現場で求められるPT・OTの養成において、専門学校の教育に求められている要素の一つを把握するための基礎資料となる。

【対象と方法】
 対象は本学院教職員19名で、内訳は専任教員17名、PT・OT以外の職員2名である。専任教員の教員歴は1~28年である。2002年の中央教育審議会(中教審)の答申「新しい時代における教養教育のあり方について」を参考にして、「教養とは何か」について自由記述によるアンケート調査を行った。自由記述の結果を質的研究の手法の一つであるKJ法を用いて、本学院の教職員の教養に対する意識および現状の問題の把握を試みた。

【結果および考察】
 「教養とは何か」という質問に対する自由記述回答の中で最も多くは、端的に表現すると「自己対象化能力」であると捉えていることが明らかになった。具体的には自らを客観化、相対化することができる能力であり、他者との関係性においてはじめて自己を規定できる能力であるということができる。これは、自らのおかれた状況において問題を正確に把握し、解決に向けての行動が取ることができる能力の基礎であり、臨床現場で求められる大切な要素であると考える。また、本来家庭教育の場や、これまでの生活体験の中で長い時間をかけて身につけるものであるという回答が多く見られ、広く一般的社会的常識を含むものであると捉えていることが明らかになった。同時に、この問題は学生側の問題のみならず、教員側の問題も大いに関係するということが示唆された。
 これを踏まえて実際にカリキュラムの中での実践可能性について、本学院のいくつかの試みを交えて報告する。

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© 2005 日本理学療法士協会
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