理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 91
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教育・管理系理学療法
理学療法士養成教育における介護体験実習の意義
―実習指導者に対するアンケート調査―
*奥 壽郎高田 治実江口 英範与那嶺 司坂本 雄甲斐 みどり塩田 紀章
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抄録

【目的】PTへのニーズは、高齢者介護施設(以下施設)や地域リハへと拡大している。養成教育もこのようなニーズに対応させる必要がある。このことより、本校は1期生に対し1年次終了時(平成16年3月)に施設の現場を通して高齢者理学療法の理解の一助にする目的で、3日間の介護体験実習(以下実習)を実施し、実習指導者に対してアンケート調査を実施したので報告する。
【方法】実習指導者32名に対してアンケート調査を行い、回答が得られた28名とした。介護老人保健施設25名・特別養護老人ホーム3名、資格は、介護福祉士11名・PT6名・社会福祉士4名・OT2名・看護師2名・事務職2名・医師1名であった。郵送法によるアンケート調査を平成16年4月に実施した。調査項目は、1貴施設での実習項目のうちPT教育で有益と思われる項目、2貴施設での実習項目のうちPT教育で必要でないと思われる項目、3PT教育における実習の必要性とその理由、4実習時期、5実習期間、6実習に対する意見とした。
【結果】1PT教育で有益と思われる実習項目は(全回答数96)、「すべて有益」25%、「起居・移乗動作」22.9%、「ADL全般」21.8%、「コミュニケーション」10.4%などであった。2PT教育に必要でないと思われる実習項目は(全回答数30)、「有益でない項目はない」60%、「リハに関すること」20%、「看護業務」20%であった。3PT教育での実習の必要性では、28名中27名(96.4%)が必要である、1名(4.6%)が必要はないとの回答であった。必要である理由として(全回答数39)、「実際にADL場面をみることができる」33.3%、「チーム医療・他職種の理解ができる」20.5%、「高齢者・痴呆者とのコミュニケーションの場になる」12.8%、「施設をみることができる」12.8%などであった。必要はない理由は「ボランティアでよい」であった。4時期について(全回答数32)、「基礎医学科目終了後」56.2%、「PT専門科目終了後」25%、「一般教養科目終了後」9.4%、「卒業前」6.3%、「臨床実習として行う」3.1%であった。「基礎医学教科終了後」の理由は、「ADL障害を理解しやすい」であった。5実習期間については(全回答数29)、「1週間」75.9%、「3日間」13.8%であった。「1週間」の理由では、「観察・実践・流れを理解するには1週間は必要」であった。6実習に対する意見では(複数回答で全回答数32)、「施設に就職する学生を育成してほしい」69.2%、「実習の目的・モデルパターンを提示してほしい」26.5%などであった。
【考察】現場の意見より理学療法教育において実習は、ADL障害・チーム医療・施設をみるなどの点で意義があると考えられた。しかし、期間について1週間との意見が大多数であり、今後の検討が必要である。また、実習に対する意見で、実習を通して施設への就職の希望、実習に関する目的・モデルの提示の要望が聞かれ、これらを今後の学生教育に生かしていく必要があると思われた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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