理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 541
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教育・管理系理学療法
理学療法学専攻学生に対する早期臨床教育の取り組み
―early clinical exposureとprofessionals contact―
*吉川 卓司大城 昌平木村 朗水池 千尋宮崎 哲哉池ヶ谷 利浩田代 安理永谷 奈々弥柴本 千晶
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抄録

【はじめに】近年、理学療法士養成校でearly clinical exposure(早期臨床見学:以下 ECE)に取り組むケースが増えている。ECEは、通常の臨床実習と異なり、入学後の早い時期に医療者サイドからではなく患者の立場から医療の場を体験し、その後の講義や実習、さらには総合臨床実習までをスムーズに導く役割を担う。今回、専門職面談( professionals contact:以下PC)と組み合わせたECEの効果について検討したので報告する。
【方法】<対象>対象学生は2004年度理学療法学専攻1年生33名である。分析対象は 「PTのイメージについて」というタイトルでECEとPC実施前後に提出させたレポートである。<教育プログラムの概要>理学療法概論1(15時間)および特別セミナー(10時間)の一部としてECEとPCを行った。ECEでは見学が主たる内容になり専門家による個別の指導ではないことから、臨床家として備えるべき態度が身に付かない可能性もあるので、PCを同時期に行うことによってその問題点の修正を図った。ECEは学外共同演者の所属施設にて実施し、PCは筆頭演者および共同演者のPTが大学演習室にて自身の臨床経験の話題を交えて少人数グループの学生と対談した。<評価・分析方法>ECE、PC前後のレポートにみられる表現の多様性、内容の変化を記述文章そのものをデータ化して分析した(テキストマイニング)。今回は、形容詞の数と内容の変化、特定の単語の使用頻度と組み合わせ方、高校時成績、入試種別等について、個人属性を特徴づける項目間の連関度を調べた。webグラフノード分析(Clementine:SPSS社製)を用いて連関度が高い項目を見つけ、ECEとPC実施前後で変化した項目を調べた。
【結果】11項目の分析の結果、最終的には頻出形容詞の組み合わせにおいて連関度の高い構造が認められた。ECE、PC実施後のレポートにおける形容詞の最頻出語が実施前との組み合わせで特定できないこと、すなわち、実施後にPTのイメージを表現する形容詞が変化する傾向を示した。また、形容詞使用数の有意な増加を認めた(p<0.01)。
【考察】ECEは、初めての経験の印象によって当該領域のイメージができてしまう危険性をはらんでいるので、今回、複数の施設で見学することとPCを組み合わせるという工夫を行った。その結果、レポートには多様なPTイメージを反映した表現が多く見られ、使用形容詞数の増加が認められた。従来、学生の体験実習や見学のレポートの評価にはチェックリストを用いる定型的な方法しかなく、イメージ能力・多岐表現能力そのものの変化を評価する方法がなかった。今回、レポートの記述文章そのものを対象とするテキストマイニングによる評価方法を試み、教育効果の内容を吟味・改善できる可能が示唆された。

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© 2005 日本理学療法士協会
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