理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 542
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教育・管理系理学療法
臨床実習における装具処方への関わりと求められる教育
*高木 聖柳迫 智晴浅井 友詞小出 益徳興梠 英二田中 千陽柴山 靖
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キーワード: 臨床実習, 装具, 教育
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抄録

【はじめに】日常臨床場面において理学療法士が装具の処方・仮合わせに関わる機会は多い。しかし患者にとって装具の機能が不十分であったり、あるいは過剰な機能を有しているといった不適な装具の処方例が散見される。これは安易な処方あるいは義肢装具士任せにしていることが原因と考えられる。またそれは学生が臨床実習において装具にかかわる機会が少ないことも一要因と推測される。そこで今回我々は学生が臨床実習において装具作製にどれほどかかわっているのか調査したので、その結果をもとに若干の考察を加え報告する。
【対象】4年制専門学校理学療法学科4年生32名を対象とした。内訳は男性13名、女性19名で平均年齢は23.5±3.5歳。
【方法】2期間の臨床実習終了後アンケート形式にて質問調査を行った。調査内容は(1)実習施設の区分(2)実習中の装具処方等へのかかわり(3)講義に対する要望(4)講義は役に立ったか否か(5)卒業後装具の処方ができそうかの5項目(選択式、重複回答可)とその他要望・感想などの記述欄とした。
【結果】(1)実習施設は総合病院、大学病院が87%を占めその他は13%だった。(2)1期目にa)実際に装具の処方・仮合わせに関わった6名(19%)、b)直接関わっていないが検討会等に参加する機会があった11名(34%)、c)装具を装着している患者を見た30名(94%)、d)全くなかった2名(6%)であった。2期目においてはa)12名(38%)、b)12名(38%)、c)28名(88%)、d)4名(13%)であった。(3)上肢装具についてもっと知りたかった36%、下肢装具についてもっと知りたかった45%、体幹装具についてもっと知りたかった19%であった。記述欄では実習前後に亘る講義の要望があった。(4)講義については全員が役に立ったと回答した。記述欄では臨床に即した内容が良かったと答えたものが非常に多く(18件)、他に選択基準が理解できた等の意見が寄せられた。(5)卒業後はなんとかできそう13%、やや不安25%、かなり不安59%、全く自信がない3%であった。
【考察とまとめ】今回の調査の結果、実習中にほとんどの学生が装具装着した患者を目にしていることから理学療法士が臨床の場で装具に関わる機会は多いと考えられる。しかしその一方で臨床実習において学生が装具について処方・仮合わせといった一連の流れを経験・学習する機会が非常に少ないことが明らかになった。卒業後については90%の学生が不安を感じているが、これは臨床実習での経験不足が大きな理由と考えられる。このような実態から学内においても装具についての基礎的な内容はもちろんだが、理学療法士としての臨床的視点に立った講義が必要であろうと思われる。臨床に即した教育は学生にとっては臨床実習のみならず卒後においても非常に役立つと考えられる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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