抄録
【はじめに】「学生が考えた臨床実習のポイント」の実施の程度と「臨床実習の満足度」との関係を検討した結果,実習の満足度は実施の程度(学生の努力)以外の要因の影響を大きく受けていると考えられた。そこでそれらの要因を明らかにするため,「実習の満足度に関するアンケート」を実施し,実習の満足度に影響を与える要因を検討した。
【対象と方法】対象:某専門学校理学療法学科に在籍し,臨床実習1期を終了した4年学生41名。アンケートは,実習全体,症例の評価、症例レポート,治療の4項目に関して,それぞれ満足だった点,不満だった点を自由に記載してもらった。
【結果】全ての回答(391回答)の内容を検討し,人間関係に関すること,自分自身に関すること,実習環境に関すること,指導に関すること,患者との関係に関することの5項目に分類した。主な結果を以下に示す。(1)実習全体:「満足だった点」では、時間的に追われることなく多くの患者を担当できたなど実習環境に関すること38.4%,向上心を持つことができたなど自分自身に関すること24.7%,「不満足だった点」では知識不足など自分自身に関すること43.4%,もう少し指導をしてほしかったなど指導に関すること18.9%,日曜以外に休みがなかったなど実習環境に関すること11.3%。(2)症例の評価:「満足だった点」では計画通りに実施できたなど自分自身に関すること41.5%,実習環境が22.0%。「不満だった点」では時間がかかりすぎたなど自分自身に関することが61.4%,指導に関すること22.7%。(3)症例レポート:「満足だった点」では提出期限を守れたなど自分自身に関すること60.9%,十分なフィードバックがあったなど指導に関すること13.0%。「不満だった点」ではうまく文章を書けなかったなど自分自身に関すること78.3%。(4)治療:「満足だった点」では工夫して治療できたなど自分自身に関すること34.0%,患者との関係に関すること31.9%。「不満だった点」では時間を有効に使えなかったなど自分自身に関すること62.2%,指導に関することが15.6%であった。
【考察】「実習の満足度」には自分自身の努力以外に,「精神的・時間的にゆとりがあった」「努力を評価された」など実習環境,指導内容に関する環境要因の影響が大きかった。不満足度には自分自身の努力が最も大きく影響を与えていたが,あまり指導してもらえなかったなど指導内容の影響も大きかった。これらより「実習の満足度」に影響を与える要因としては,自分自身が向上するために努力する動機づけ要因以外に,実習環境,指導内容などの環境要因の影響も大きい。臨床実習をより有意義にするためには,養成校として学生に対する十分な指導は当然であるが,実習施設と協力してよりよい実習環境を提供できるように配慮する必要があると考える。