Dental Medicine Research
Online ISSN : 2186-540X
Print ISSN : 1882-0719
ISSN-L : 1882-0719
原著
成人顎関節における内外側線維膜の立体超微形態学的研究
小林 弘茂瀬川 和之中村 雅典
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 30 巻 2 号 p. 109-116

詳細
抄録

顎関節内側および外側の膜性壁における構成線維の分布や配列を, 主に走査電子顕微鏡を用いて立体的に観察し, 内外側壁の構造の相違や力学的特徴について検討した. 60歳から90歳までの解剖実習用遺体の顎関節内側および外側線維膜で破壊性変化が認められないものを材料とし, 光学顕微鏡でコラーゲン線維束と弾性線維の分布を観察するために弾性線維染色, 走査電子顕微鏡でコラーゲン線維の立体構築を観察するために, KOH-Triton-trypsin処理, 弾性線維の立体構築を観察するためにKOH-コラゲナーゼ処理を各々行った. 関節円板内外側縁から延長し, 上下方向へ走向する結合組織膜を肉眼的に剖出できた. 関節円板と線維膜の境界部では, 太く網状を呈する弾性線維が密集していた. 線維膜は円板側縁付近では, 多くの血管と脂肪組織, コラーゲン線維束群や弾性線維の集塊で形成されていたが, 線維束は内側より外側においてより密に配列していた. 脂肪組織間に介在するコラーゲン線維は不規則に配列した束状あるいは線維網の構造を示した. これらの構造から, 円板挙動の初期に応力の集中しやすい円板境界部付近には緩衝構造が用意されていることが示唆された. 関節円板から離れるとともに線維束は増加し, 遠位では, 血管や脂肪組織はほとんど見られず, 上下, 内外側方向に斜走する, あるいは前後方向に配列するコラーゲン線維束が主体となっていた. 板状を呈する線維束は一定の空隙を介する層構造を形成していた. 板状線維束を形成するコラーゲン線維の多くは同一平面上で交錯していた. 板状線維束のほかに, 蛇行あるいは螺旋状に捻転している線維束も混在していた. 関節円板から遠位の線維膜では蛇行する線維束が増加していた. 蛇行あるいは捻転した線維束と線維束間の弾性線維の存在は, 円板移動時の線維膜の伸展と関与すると考えられる.

著者関連情報
© 2010 昭和大学・昭和歯学会
次の記事
feedback
Top