理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 652
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理学療法基礎系
スロープ昇降時における接地課題への適応
*相澤 高治長原 亜希石井 慎一郎
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キーワード: CL角, 運動制御, 接地課題
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抄録

【目的】スロープ昇降は斜面という難易度の高い接地課題を達成しながら、一定の動作パターンを再現し、重心を鉛直方向へ移動させるという高度な力学的対応を必要とする動作である。斜面という環境に対応し自動調節された動作パターンを再現するといった力学対応の背景に存在するメカニズムについて、運動力学的観点から論じた報告は少ない。本研究の目的は、スロープ昇降立脚期における接地課題に適応するメカニズムを調べることにある。
【方法】対象者は健常成人6名(男性3名、女性3名、平均年齢28.5歳)とした。被験者はスロープ昇降中の下肢関節角度と床反力ベクトルを三次元動作解析装置VICON612(VICON MOTION SYSTEM 社製)ならびに床反力計(AMTI社製)を用いて計測した。計測回数は各被験者5歩、スロープの傾斜は12°とした。本研究で特に着目したのは、スロープ昇降中で最も制御が難しい床反力鉛直方向成分が最大となるイニシャルコンタクト後とし、この時期の股関節、膝関節、足関節の屈伸角度の変動幅を求め、下肢ダイナミックアライメントの冗長性を調べた。また、床反力ベクトルと股関節、足関節を結んだ線のなす角(CL角)を求め、床反力ベクトルが下肢軸に対してどのように作用しているか調べた。
【結果】計測によって得られた5歩の平均と変動幅を以下に示す。CL角の極性は下肢軸を基準として床反力ベクトルが進行方向へ傾斜している時を(-)とした。スロープ昇りでの各関節角度は、股関節屈曲22.28°(SD±4.10)、膝関節屈曲31.46°(SD±6.00)、足関節背屈3.24°(SD±5.26)であった。一方CL角は2.00°(SD±1.84)であった。スロープ降りでは、股関節屈曲14.29°(SD±3.76)、膝関節26.88°(SD±10.04)、足関節底屈‐16.36°(±SD5.38)であった。一方CL角は‐1.36°(SD±1.93)であった。関節角度とCL角の変動の幅を比較すると、関節角度の変動幅がCL角の変動幅よりも大きいという傾向があった。
【考察】スロープ昇降は斜面という路面環境に適応し、重心を鉛直方向に移動させるという高度な力学的対応を必要とする動作である。第40回日本理学療法学術大会において演者は歩行において、イニシャルコンタクト後の最大床反力がかかる時期に、床反力ベクトルと下肢軸とを一致させるように制御していることを報告したが、今回のスロープ昇降においても同様な制御方法を選択していることが示唆された。今後は階段昇降など複数の動作で、接地課題に適応するメカニズムを検討していきたい。

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© 2006 日本理学療法士協会
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