理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 668
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理学療法基礎系
ストレッチングが膝伸展運動の角速度に及ぼす影響
ハムストリングスの柔軟性に着目して
*栗原 靖羽柴 弘陽松村 将司春山 若葉鮎川 将之竹井 仁
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抄録

【目的】膝伸展運動には、伸展筋力に加えて拮抗筋であるハムストリングスの柔軟性が重要である。特に速い動きが要求されるスポーツ場面では、ハムストリングスに硬さや短縮があると、膝伸展角速度が低下し、十分な膝伸展筋力を発揮出来ないと考える。そこで、膝伸展運動の拮抗筋であるハムストリングスに対してストレッチを施行し、施行前後での膝伸展角速度に及ぼす影響を検討したので報告する。
【方法】被験者は、実験趣旨を説明して同意を得た健常男性11名(平均22.9歳)。膝伸展運動は、a:端座位での膝90度屈曲位からの完全伸展と、b:背臥位で台から下腿を下ろした膝90度屈曲位からの完全伸展、の2種類とした。運動課題は、1):aにて最大努力での膝伸展運動を3分の間隔を置いて2回実施し(以下:対照値)、10分の休憩を置いた後にストレッチを施行し、再度最大努力による膝伸展運動を3分の間隔を置いて2回実施(以下:S)、2):1)の条件で対照値を測定して10分休憩後にストレッチを施行せずに膝伸展運動実施(以下:非S)、3):bにて1)の条件を実施、4):bにて2)の条件を実施、の4課題とした。課題は、日を変えて無作為で実施した。ストレッチは、30秒間を2セット実施した。膝伸展運動に関しては、3軸加速度計MP-G3-01A(micro stone社製)を脛骨遠位部に取り付け、ピーク角速度[゜/sec]とその時点でのピーク時角度[゜]を測定した。また、各課題の実験前後において、SLR角[゜]とハムストリングスの数カ所の筋硬度[g](ASKERゴム硬度計FP型))を測定した。統計処理は、SPSS(ver.13)を用いt検定を行った(有意水準は5%)。
【結果】Sでは、座位、背臥位ともに対照値と比較してピーク角速度(端座位:629.5→697.3、背臥位:582.7→661.8)とピーク時角度(端座位:55.8→50.3、背臥位:43.5→35.6)の有意な変化を認めたが、非Sでは有意差はなかった。ピーク時角度においては、端座位55.8と背臥位43.5との間と、端座位50.3と背臥位35.6との間に有意差があった。また、Sにおける対照値からのピーク角速度の増加量と、ピーク時角度の増加量を座位と背臥位で比較した結果、有意差はなかった。また、座位と背臥位ともに、実験前後におけるSLR角はSで有意に増加し、筋硬度はSで有意に減少した。
【考察】ピーク角速度の増加は、ストレッチングによりハムストリングスの伸張性が高まることで拮抗筋としての筋の滑走が円滑になり、膝伸展筋力が発揮しやすくなったためと考える。さらには拮抗筋の抵抗感が減少することで、ピーク時角度がより伸展位に近づいたと考える。また、背臥位が端座位よりもピーク時角度が伸展位に近いことから、ハムストリングスの2関節筋としての制約作用が影響していると考える。ただし、ストレッチングによって獲得されたハムストリングスの伸張性は各肢位において同程度のために、ピーク角速度増加量とピーク時角度増加量には有意差が生じなかったと考える。

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© 2006 日本理学療法士協会
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