抄録
【目的】リビリテーションにおいて筋力の評価はスポーツ障害・疾患の評価に不可欠である。また、動作を適切に反復・持続させ、より質の高い動作を可能とするためには、筋自体の筋持久力が必要とされる。上肢を使用した動作において手関節背屈筋は手関節の保持に重要である。今回我々は、手関節掌屈・背屈筋の持久特性を客観的に評価するために両側橈側手根屈筋(以下屈筋)、長・短橈側手根伸筋(以下伸筋)に対して表面筋電図を用いて中央周波数(Median Frequency、MF)と平均周波数(Mean Power Frequency、MPF)解析による筋疲労解析を行った。
【方法】被検者は健常男性28例、年齢18から27歳(平均21.3±2.5歳)を対象とした。本研究は被検者が十分な説明を受けた後、十分な理解の上、被検者本人の自由意志による同意が得られた後、実施した。評価測定は筋力測定装置CYBEX6000を用いて手関節0°に固定し背屈および掌屈を3回行い、等尺性最大随意収縮力を求め、この値を基準値とした。基準値の50%強度運動負荷で手関節掌屈および背屈の等尺性運動を60秒間持続し、両側屈筋、伸筋の筋活動をホルター筋電計ME3000Pにて測定した。測定した生波形をマイクロコンピューターに転送し、付属の解析ソフトでパワースペクトル解析を行い、MFおよびMPFの経時的減少率を算出した。
【結果】屈筋と伸筋の最大随意収縮力に差はなかった。筋疲労解析の結果、MFとMPFは疲労進行に伴い減少し、屈筋に比べ伸筋の低下が小さく疲労が少ないことが示された。
【考察】疲労の進行に伴い筋電周波数は低域にシフトし、直線的に低下することが知られている。伸筋と屈筋のMFとMPF減少率を比較した結果、屈筋に比べ伸筋の減少率が小さかった。これは日常生活において手関節屈筋は把持動作など短時間の収縮が多く、伸筋は手関節を保持するために持久性が必要とされるためであると考えられる。周波数減少率は筋線維タイプ分布と相関すると考えられている。Type1線維はミトコンドリアが多く酸化系酵素を多く含むために有酸素的代謝が活発に行われる。その結果、筋収縮に必要なATPの供給が十分に行われるので疲労しにくい持久的な筋である。一方、Type2線維はグリコーゲン顆粒や解糖系の酵素を多く含む。このため高いパワーを発揮できるが疲労しやすいという特徴がある。今回の結果より伸筋は屈筋に比べType1線維の比率が大きく、酸化系酵素の活性も高いと考えられる。
【まとめ】手関節掌屈・背屈筋の持久特性について表面筋電図を用いて筋疲労解析を行った。その結果、最大随意収縮力に差はなかったが、筋疲労解析において屈筋は伸筋に比べ持久力が低下していた。これらの結果より、伸筋は屈筋に比べType1線維の比率が大きく、酸化系酵素の活性が高いことが示唆された。