理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 760
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理学療法基礎系
高齢者起立動作にける重心移動軌跡の曲率特性
*万治 淳史新田 收
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抄録

【目的】福祉用具のなかで特に導入率が高いものに手すりであり,生活のあらゆる場面で活用されている.ところで高齢者がどのように手すりを利用しているのか,若年者との比較において分析した報告は少ない.今回我々は,重心の移動軌跡の特徴を曲率という側面から分析することにより,高齢者起立動作の特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】若年群10名(男性5名,女性5名,平均19.9歳(19-22),身長平均164.0cm(sd6.9))、高齢者群11名(男性5名・女性6名,平均73.7歳65-93),身長平均144.6cm(sd17.36))を分析対象とした.実験は被験者に内容を説明し同意を求めた,尚本研究は首都大学東京の倫理審査の承認を得て行った.被験者の頭頂・肩峰・上腕骨外側上顆・橈骨茎上突起・第二中手骨頭・上前腸骨棘から大転子を結んだ線上2/3・大腿骨外側上顆・腓骨外果・第五中足骨頭にマーカーを貼付し,VICON360を用い周波数60Hzにて試行中の各指標の座標を計測した.各指標から各肢節の重心点を算出,各肢節の体重比より全身の身体重心位置を算出した.前後・鉛直方向の2成分で表された重心軌跡をもとに0.17sec(1/6sec)単位での曲率を算出、同計算を60Hzにて繰り返し,動作中の曲率の変化を算出した.得られたデータより1動作中の最大曲率の値と,記録された時間を記録した.なお曲率は曲線上で2点をとり,2点間の距離を限りなく縮小した時,曲線上2点における2本の接線のなす角度と2点間の距離の商で表される.今回距離因子を補正する目的で各被験者の身長を150cmに補正し,曲率の算出を行った.また時間因子については立ち上がりの開始を0,終了を100と補正した後、曲率最大値が示された点を記録した.試行は被験者の膝窩高に設定した台から前方に固定したピックアップウォーカーを両手で把持しゆっくり立ち上がりを行うよう指示した.分析は各試行によって得られた曲率最大値と,最大値を記録した時間(曲率最大点)について若年・高齢者の2群間で独立したサンプルのt検定により比較した.有意水準はP<0.05とした.
【結果と考察】
曲率最大値について、曲率最大値(若年)0.025(sd0.0079)、曲率最大値(高齢)0.018(sd0.0060)と若年群が高齢者群に対し優位に大きい値を示した(P<0.05)。また、曲率最大値を示した時間について、最大点平均(若年)23.69%(sd6.37)、最大点(高齢)15.74%(sd7.61)と若年群が有意に大きい値を示し(P<0.05)、立ち上がりにおいて有意に遅く最大曲率を示すことがわかった。以上の結果から高齢者群では手すりを用いた立ち上がりの重心の前方移動と上方移動の要素の切り替わりが不明瞭となっているのが示唆された.

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© 2006 日本理学療法士協会
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