抄録
【はじめに】
現在、精神運動発達遅滞の小児に対するリハビリテーションにおいて、自閉症と診断はされていないものの、自閉傾向のある子供たちが多々見られるようになった。しかし、そのような子供たちに対する評価・治療に関する報告は少ない。そこで自閉症の治療で有効性が示されてきたTEACCHを参考に取り組みを始めたので報告する。
【TEACCHについて】
TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children、自閉症及び関連するコミュニケーション障害の子供のための治療と教育)とは、ノースカロライナ州で実施されている包括的な治療教育プログラムおよび生活支援システムのことであり、個に応じた構造化や教育支援を提供することを重視している。そのため、個人の特性を理解するために十分なアセスメントが必要となる。これらを満たすためにTEACCHの中で開発され、標準化されているアセスメント法が3つある。
1つめはCARS(Childhood Autism Rating Scale、小児自閉症評価尺度)という自閉症の診断分類法である。これは就学前の年齢層に対して開発し、選定、採用されたもので子供の行動と反応を観察し、15領域のそれぞれに評点をつける。その他2つのアセスメント法は教育を実施するためのものであり、就学前以下の機能を持つ児童に対してはPEP-R(Psycho-Educational Profile-R、新版・心理教育診断検査)、12歳以上の場合にはAAPEP(Adolescent and Adult Psycho-Educational Profile、青年期・成人期用の心理教育診断検査)を利用する。PEP-R 、AAPEPの両検査とも合格・不合格だけではなく、その中間の「芽生え反応」という評定があり、それが教育的支援を実施する上での手がかりとなっている。
【CARS、PEP-Rを利用した取り組み・報告】
10歳女児。移動能力は独歩で可能であり、膝のコントロールが悪く、棒足歩行やその場でジャンプするような動作がみられたが、問題となるのは歩容程度であった。しかし、PEP‐Rによる評価を行ってみると、発達尺度は全体的に低く、その中でも特に点数が低かった項目は模倣と言語表出であり、模倣に関しては両手を挙上するのが限界であった。そのため、プログラムとしては模倣と芽生え反応がみられた項目を中心に行った。現在、治療開始から3ヶ月が経過した。模倣にも片手だけ挙上することも可能となった。行動領域の人との関わりに関しても、目を合わせることが可能となってきた。