理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 158
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骨・関節系理学療法
大腿骨頚部骨折後の機能予後決定因子は?
*佐藤 泰央佐藤 弘一郎小島 清小林 利男
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キーワード: 大腿骨頸部骨折, 女性, BMI
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抄録
【目的】
高齢化社会の中、大腿骨頚部骨折(以下骨折)後に歩行獲得が出来るか否かはリハビリテーション医療の大きな課題のひとつである。今回我々は、どの様な患者が最終的に歩行獲得に至らないのか、患者の性別、年齢及びBody Mass Index(以下BMI)との関連について調査したので報告する。
【方法】
平成15年4月から平成17年10月まで当院を入退院した骨折患者で、受傷前に歩行可能な者を対象とした。男性13名(年齢42~91歳、平均71.5歳)、女性30名(年齢56~94歳、平均81.7歳)であった。骨折型は内側18名(平均72.3歳)、外側25名(平均77.0歳)、術式は人工骨頭置換術15例(平均77.5歳)、Compression Hip Screw 18例(平均75.1歳)、γ-Nail 6例(平均82.3歳)、その他4例(平均72.3歳)であった。それぞれの患者の年齢、性別及びBMIの関係から歩行獲得、車椅子生活、寝たきりとの関連性を認知症、合併症の有無を含めて調査した。
【結果】
男性は13例全てが歩行獲得可能であった。BMIの内訳は普通体重11例、低体重2例、肥満1度1例(BMI 17.1~25.8、平均21.9)であった。認知症は0例であった。女性は歩行獲得可能だったのは21例 (67.7%、年齢56~93歳、平均71.8歳)で、BMIの内訳は普通体重5例、肥満1度4例、肥満2度2例(BMI 15.9~32.9、平均23.0)であった。認知症は2例であった。車椅子生活となったのは6例(19.4%、年齢80~94歳、平均85.7歳)で、BMIの内訳は低体重2例、普通体重2例、肥満1度1例、肥満3度1例(BMI 16.6~35.6 平均23.5)であった。認知症は2例であった。寝たきりとなったのは3例(12.9% 年齢79~89歳、平均82.3歳)で、BMIの内訳は低体重2例、普通体重1例(BMI 13.9~23.3、平均18.2)であった。認知症は0例であった。寝たきりの原因は周術期からリハビリテーション期に発症した合併症(虚血性腸炎1例、イレウス1例、間質性肺炎1例)の為であった。
【考察】
今回の調査を開始する以前は肥満が歩行獲得の阻害因子ではないかと予想していた。しかし実際は低体重患者の方が肥満患者より歩行獲得が困難であるという事が明らかになった。また、認知症を合併していても歩行獲得出来た患者が存在した。寝たきりの原因になるのは、周術期からリハビリテーション期の間に発症した合併症の有無であると思われる。我々の調査結果から、合併症を併発し易いのは低体重群であることがわかった。低体重は体脂肪量が少ないのと同時に筋量も少ないのではないかと推測された。余分な体脂肪や筋肉は、骨折、手術、リハビリテーションという肉体侵襲の中で体力維持あるいは回復の手助けになっている可能性も示唆された。
【まとめ】
大腿骨頚部骨折患者の予後因子を調査・検討した。低体重で高齢の女性患者は歩行獲得が困難である可能性が高い事が示された。
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© 2006 日本理学療法士協会
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