理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 302
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骨・関節系理学療法
大学空手道部員におけるスポーツ傷害の実態調査
*伊藤 雅範
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抄録
【はじめに】今日、理学療法の必要性が高まると共に理学療法士の職域は拡大しており,スポーツ傷害(以下傷害)にも少なからず関わるようになった。多くの競技種目があり,傷害に関わる上でその特異性を把握することが大切になってくる。そこで今回、大学空手道部員を対象として傷害に関する調査を実施したのでここに報告する。

【対象及び方法】2005年5月22日に行われた第40回日本空手道松濤會学生連盟演武大会に参加した大学4校93名(男性64名、女性29名)の空手道部員を対象に無記名選択方式(一部記述)にてアンケート調査を行った。調査項目として傷害の有無・診断名・発生要因・ケガに対する予防策(以下予防策)の有無・自己管理等を挙げた。

【結果】現在ケガをしている部員は12名(13%)14件,診断名(複数回答)は足関節捻挫2件,ハムストリングスの肉離れ2件,腰痛症2件,アキレス腱炎1件,膝部打撲1件,腰椎捻挫1件,肋骨骨折1件,肩鎖関節亜脱臼1件、手指骨折1件等であり,発生要因として外傷10件,障害4件,受傷時応急処置を行った部員は1名であった。また,現在予防策を取っている部員は66名(71%)であった。予防策の内容(複数回答)としてはアイシング1件,テーピング7件,ストレッチ53件,筋トレ16件,ウォーミングアップとクーリングダウン37件,その他7件であり,ケガに対する自己管理が出来ている部員は18名(19%),イメージ通りの空手が行えている部員は6名(6%)であった。イメージ通りの空手が行えていると回答していない部員はその理由(複数回答)として痛み6件,痛みやケガに対する不安22件,集中力低下20件,筋力不足41件,疲労19件,柔軟性不足44件等を挙げた。

【考察】空手道とは基本的に打撃系格闘技であるため攻撃する側も受けにまわる側も接触外傷が多く,突きや蹴り等特定の練習を繰り返し行うため疲労も特定部位に蓄積される。そのため,普段から練習前のウォーミングアップ,練習後のクーリングダウンを十分行い,筋トレ・ストレッチ・テーピング等予防策を取り,受傷時に素早く応急処置を行う必要性があると考える。
今回の調査結果では,ケガをしている部員は約1割(12名)と少なかったが,その内1名しか受傷時応急処置を行っていないという現状が浮かび上がってきた。また,ウォーミングアップとクーリングダウンを念入りに行っている部員は4割しかいなかったので,運動前から受傷しやすい状況にあるのではないかと考えた。予防策を取っている部員は7割を超えたが,ケガに対する自己管理が出来ている部員は約2割しかいないため,各部員が自分自身に必要な予防策を十分に行えていないのではないかと考えた。これらのことから,予防策や応急処置等,自己管理の重要性を理解して頂き、それらが十分に行えるよう働きかけていきたい。


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© 2006 日本理学療法士協会
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