抄録
【はじめに】幼稚園児や小学生における足部変形や足部障害に関して多くの報告があるが,身体の固まりきっていない児童期における靴の適合はそれらと関わりが深いと考える。靴は足がどの発達段階にあっても,足を保護し,成長を妨げず,足の発達を促すものを選ばなければならない。子供は靴の不適により足が圧迫されても苦痛や不快の感情を示さないことが多いので保護者の靴選びが子供の足の形成を左右すると考え,今回,園児の足部形態と靴の調査,保護者の靴選びの認識についてのアンケート調査を行った。
【対象と方法】対象は,青森県弘前市内の幼稚園1施設の園児3歳児クラス68名(年少)・4歳児クラス80名(年中)・5歳児クラス88名(年長),計236名(男児120名,女児116名,身長107.5±7.5cm,体重18.1±3.7kg)とその保護者である。園児に対し,アニマ社製接地足底投影器Pedoscopeにより自然立位で得られたfootprintから足長・足幅・足部変形の有無を調べた。また,舟状骨高/足長によるアーチ高率(%),足幅/足長による足示率(%)を求めた。統計処理にはTukey検定を用いた。また,園児の外靴を対象に靴の種類・サイズ・靴幅・実際の靴の長さ・踵つぶしの有無を調べた。アンケートでは園児の保護者232名に対し,靴所持数・年間靴購入数・靴の選択理由・靴サイズ等を調査した。
【結果】足部調査では,学年が上がるにつれて足長・足幅とも有意に大きく,足示数は有意に低下がみられた。舟状骨高も同様に学年とともに高くなっており,アーチ高率は年長・年少間では有意な差が見られず,年中・年少,年中・年長各群間で有意な差が見られた。外反母趾は7.6%,浮き趾は73.7%にみられた。園児が履いている靴は,マジックテープタイプが最も多く(75.6%),靴幅表示の無いものが50.0%,2Eが47.4%で,踵つぶしがみられるものは29.4%であった。アンケート回収率は78.4%で,平均靴所持数2.9足,平均年間靴購入数3.3足,購入時の選択理由では,「子供が一人でも履けるもの」が多かった。自由解答欄には子供の扁平足への心配や歩き方に対する不安,靴選びへの不安,足に適した靴が見つからないといった不満が多く挙げられた。
【考察】足長・足幅は学年を追うごとに成長がみられ,特に年中・年長間の差が有意であった。足示数の低下から長軸方向の成長に伴い縦長な足部へ変化していることが伺える。舟状骨高が年少・年中間で変化が少ないのに比べ足長の増加が顕著であることから,アーチ高率は年中と他の学年とで有意差が現れたと考えられるが,他に体重増加や運動量との関連が示唆される。子供たちの足には,足部変形や浮き趾が多く見られ,保護者の靴選びの基準で,大きめのサイズを選ぶという回答が多く,実際に適したサイズの靴を選択できていない可能性があり,これらが足部障害の発生因子となっていることが示唆された。