抄録
【はじめに】当院にて短下肢装具(以下、AFO)を作製することは多いが、自宅退院後の使用状況の把握は十分ではない。今回、自宅退院後のAFO使用状況を調査し、作製における対応について検討したので報告する。
【対象と方法】平成15年4月1日から平成17年3月31日までに脳血管障害で当院に入院し、AFOを作製後、AFOを使用した生活設定を行い自宅退院した46名(平均年齢66.0±10.3歳)に、郵送式によるアンケート調査を行い、回答のあった32名を対象とした(回収率69.6%)。個人情報の利用については個人情報保護法に遵守した対応をとった。アンケート内容はAFOの使用有無を中心に8項目を調査した。分析は、AFOの使用有無と他項目の関連性についてカイ2乗検定を用いた(P<0.05)。
【結果】現在のAFO使用者は78.1%であった。使用有無と各項目の関連で、関連性を認めたものは「現在の必要性」であった。関連性を認めなかったものは「作製時の必要性」「作製時の説明理解度」「転倒経験」「転倒未遂経験」であった。作製時の説明は93%の方が理解していた。不使用理由は、「不要」44.4%、「痛み」22.2%、「サイズの不一致」・「装着の面倒」・「歩行しにくい」が各々11.1%であり、必要性を感じていながら、使用困難な方もいた。また、全員が何らかのリハビリテーションを継続していた(通所57.9%、訪問26.3%、外来15.8%)。
【考察】「作製時の説明理解度」と「現在の使用有無」が関連性を認めず、説明が理解できればAFOを使用しているという予測とは相反する結果であった。不使用理由のうち「痛み」や「サイズの不一致」は長期的な使用に際しての定期的なチェックアウト不足がその原因と考えられた。また、不使用理由の中で「不要」が44.4%と最も多く、その経緯は機能回復など身体状況の変化に伴う不適合ではないかと予測したが、今回はこの点まで調査しておらず、原因追求には至らなかった。当院ではAFO作製時、医師の処方の下、複数の理学療法士と業者にてチェックアウトを行い、ミスの予防に努めている。しかし、退院後は身体状況や生活環境の変化、専門家による関わりの減少等の理由により、その後の対応が行いにくいのではないかと考えられた。
今回、作製時の説明は93%の方が理解しており、説明の重要性を再認識できた。今後は、作製時の適応や処方についてより質の高い評価を行なっていくことや口頭説明以外に動作を通して使用の理解を得るなどの対応が必要と感じた。また、患者様と御家族に作製業者の連絡先など不備が生じた際の窓口を伝えておくことや情報提供書などで次施設との連携をとっていくことも必要と考えられた。これら退院後のフォローアップ体制については今後の課題としたい。