理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1116
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生活環境支援系理学療法
脊髄損傷者のSeatingに関する研究(第3報)
車いす操作性から見た至的車いす条件
*水上 昌文居村 茂幸島田 一志高木 憲司浅野 圭司時枝 陽子
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抄録

【目的】脊髄損傷者の車いす上の座位姿勢をハード面からサポートするシーティングは,熟達者による経験則に依存している.本研究の最終目的は,残存機能や脊柱の形態に依存した脊髄損傷者の平面上での座位姿勢および座位保持能力から,車椅子上における理想的な座位を得るための車椅子形状を決定する方策を開発することである.昨年の本学会では,車いす上座位安定性の指標から見た至敵車いす条件を,座位姿勢・座位能力別二検討し報告した.今回は車いす操作性の指標から見た望ましい車椅子座面条件を明らかにすることを目的に検討した.
【方法】対象は身体障害者更生施設入所中の頸髄完全損傷者男性17例,年齢18~563歳(平均31.2±9.3歳)であり,研究計画は本学倫理委員会の承認を受け,全対象者より文書により同意を得た.方法は対象者の治療台上の安楽椅子座位(以下基準座位)姿勢を側方よりデジタルカメラで撮影後,八つの座位姿勢変数を計測し,姿勢を三つの形に判別分析により分類した.次に同姿勢にて今回新たに考案した臨床的バランススコア(上肢の支持の有無などで判定.20点満点)により基準座位バランスを評価した.次いで座角/背角(5/95,8/92.5,12/90),背高(高:基準座位時の肩甲骨下角-2cm,低:同じく最突出椎の高さ+2cm)の条件を変えた採型用車椅子(日進医療器製)上での前方リーチを座位安定性の指標として計測した.車いす操作性の指標は室内に片道5mのコースを設定し,静止から5mの所要時間,5m往復によるコース所要時間とし,各所要時間に対する車いす条件の影響を二要員分散分析により検討した.また各条件におけるコース所要時間の順位を点数化して比較した.さらに車いす上最大リーチ距離と臨床バランススコアの回帰式およびその分布より,バランス良好群と不良群に分類し,基準座位姿勢およびバランス能力別に,車いす操作能力が最大となる車いす条件を検討した.
【結果及び考察】5m所要時間,コース所要時間ともに車いす条件の影響は有意には認められず,個々人の姿勢や座位バランス能力により最短所要時間となる車いす条件は異なることが考えられた.最大リーチ距離と臨床バランススコアとの間にはR2=0.629の有意な相関を認め,バランススコア14点(両手を大腿上から5秒以上浮かせて保持できる)以下をバランス不良群,15点以上を良好群とした.コース所要時間から見た望ましい車いす条件は,基準座位姿勢が伸展型・バランス不良群は座角8度背もたれ高条件,または座角12度背もたれ低条件,後弯後傾型・バランス不良群は座角5度背もたれ低条件,バランス良好群では座角8度背もたれ高条件,または座角12度背もたれ低条件,後弯前傾型・バランス不良群は座角8度または12度の背もたれ高条件,良好群では座角12度背もたれ低条件がそれぞれ最大の順位点であった.

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© 2006 日本理学療法士協会
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