理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1159
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生活環境支援系理学療法
余暇活動が精神機能に及ぼす影響についての一考察
*山本 晋史松高 津加紗高橋 静恵竹渕 謙悟
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抄録
【はじめに】今日,回復期リハビリテーション病棟では自宅復帰に向けた病棟でのADL訓練が重要視されている.しかしながら,普段の生活の場である病棟では,患者様個人の余暇活動に対する病棟スタッフの関わりは少ない.当院では,余暇活動の取り組みとして,看護師やリハスタッフで午前中のリハビリテーションや入浴,食事以外の時間を余暇時間と捉え,折り紙や将棋,読書,簡単な体操等を行っている.この余暇活動の取り組みが,患者様の精神機能にどのような影響を及ぼすかに注目し、若干の知見を得たので報告する.
【対象および方法】対象は,当院に入院していた脳卒中患者46名とし,そのうち24名(男性18名,女性6名)を参加群,22名(男性15名,女性7名)を非参加群とした.平均年齢は参加群が67.4歳,非参加群が71.4歳であった.
 対象者のHDS-R,Kohs立方体テストの各項目について,余暇活動の取り組みに参加することで各群の初期評価と最終評価に差が生じるのかを比較・検証した.各群の初期評価と最終評価の比較にはWilcoxonの検定を,2群間の比較にはMann-Whitneyの検定を用い,いずれも優位水準は5%とした.
【結果】参加群のHDS-Rについては,初期評価で平均19.1ポイントであったのが最終評価では平均21.5ポイントとなり,Kohs立方体テストについても,初期評価で平均57.3ポイントであったのが最終評価では平均61.7ポイントとなり,各項目ともに有意差が見られた.それに対して,非参加群のHDS-Rについては,初期評価では平均18.4ポイントであったのが最終評価では平均19.3ポイント,Kohs立方体テストについても,初期評価では平均45.6ポイントであったのが最終評価では平均47.5ポイントと,各項目ともに有意差は見られなかった.
また,参加群と非参加群の間に有意差は見られなかった.なお,各群ともに初期評価時の偏りは見られなかった.
【考察】患者様において,リハビリテーションの時間以外に余暇活動を行うことが精神機能を改善する1つの要因になったと考えられる.精神機能を改善することで,以前よりもリハビリテーション効果の向上が期待でき,それが病棟でのADL能力向上にもつながる.加えて,患者様が日中ただベッドで寝ているのではなく,自らの意思で趣味趣向に合った余暇活動を行うことで精神機能の低下を防止できる.また,その活動が習慣化されることで自宅復帰にもスムーズにつなげられ,在宅での能力維持にも役立つと考えられる.今後は,より患者様個人の在宅生活を見据えた活動内容と活動時間,そしてスタッフの関わり方を考えていく必要があると思われる.
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© 2006 日本理学療法士協会
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