理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 912
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教育・管理系理学療法
理学療法士養成学校の学内教育における「健常者の動作観察」の実践
学生の観察能力の習熟により教員間の学生評価のばらつきは減少する
*高崎 恭輔金井 一暁西守 隆鈴木 俊明
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抄録

【目的】我々が勤務する養成校では、トップダウン過程の評価を講義する際に動作観察が重要項目であると考えている。そこで我々は、平成13年度より2年次の「動作分析学」の授業で健常者の動作観察を積極的に取り入れている。授業の方法は、学生を二人一組として基本動作を観察させ運動学的用語を用いて文章化させている。そして提出された動作観察の文章に対し、担当教員と数名の補助教員が全学生の文章を添削し、内容に応じてAからDランクまでの評定をつけている。後日、各教員より個々の学生に評定およびコメントをフィードバックし、かつ担当教員により全学生に対して助言を与える。観察する動作は、全学生のうち一定の割合の学生の評定がAおよびBランクの合格ラインに達した場合に変更する。我々は各教員間での学生評価の基準を統一するために、本年度の授業では独自に作成した教科書を利用し、かつ評定の段階付け基準も一部見直すなどして評価基準の統一化を図っている。しかし学生に対する各教員の評価は必ずしも常に一致するわけではなく、年間の授業の中でばらつきを生じる場合が見受けられる。そこで今回我々は、本年度の授業で行った動作観察の各項目において、学生に対する教員間の評価のばらつきを調査し、学生の動作観察能力の習熟度との関係について検討して今後の授業に還元したいと考えた。
【方法】本年度観察した基本動作は、授業を行った順に立ち上がり、歩行、寝返り、起きあがり、2足1段の昇段、1足1段の昇段、2足1段の降段、1足1段の降段の8項目であった。この実施順序に関しては、比較的観察が容易と思われる動作から難易度が高いと思われる動作へと変更していった。本年度は、前半の立ち上がり、歩行、寝返りでは合格者数が基準の80%に達するまでに3回の授業を要したが、起きあがり以降は全て1回で基準に達した。今回の検討方法としては、各動作1回目の評価において、合格基準のAおよびBランクに達した学生の占める割合を教員ごとに求め、担当した4人の教員間での変動係数を求めた。
【結果】変動係数は、立ち上がりが74.5%、歩行が68.4%、寝返りが34.3%、起きあがりが1.9%、2足1段の昇段が9.3 %、1足1段の昇段が4.4%、2足1段の降段が4.0%、1足1段の降段が4.7%であった。
【考察】前半の3項目での学生評価は大きなばらつきを示したが、1回で基準に達した起きあがりに向けて徐々に減少した。一方、比較的難易度の高い項目である起きあがり以降は全て1回で基準に達し、評価の変動も少なかった。前半の変動係数からも、各教員の評価能力や評価基準の解釈にはやはり差があり、このため学生の観察能力が低い時期には採点に幅が生じやすいと思われる。しかし後半の項目では学生の観察能力が習熟し、どの教員の評価基準にも見合う内容に改善されてきたために変動係数が減少したものと考えた。

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© 2006 日本理学療法士協会
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