理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2
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理学療法基礎系
視標追従における筋出力調節の応答特性
漸増・漸減運動と出力率の違い
*竹林 秀晃宮本 謙三八木 文雄宅間 豊井上 佳和宮本 祥子岡部 孝生滝本 幸治
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抄録
【はじめに】日常生活における種々の動作は,神経系が筋出力を微妙な調節にて行われている。そのため,課題に応じて合目的に筋出力を発揮する能力が必要であるが,筋出力の調節能力の評価は殆ど行われていないのが現状である。筋出力調節能力はGrading mechanismといわれ,神経―筋の協応性が必要である。そこで今回は,視標追従する筋出力調節課題を出力率と漸増・漸減運動の違いにおける特性を知ることを本研究の目的とした。
【対象】対象は,健常成人10名(男8名,女2名,22.1±4.6歳)であった。なお,対象者には実験前に本実験の主旨を説明し、同意を得た。
【方法】測定動作は,椅坐位にて膝関節90度屈曲位での膝伸展等尺性運動である。まず,100%MVCを筋力計測解析装置(フロンティア メディック)にて2回計測し,最高値を採用した。運動課題は,最大筋力の20・40・60%MVCの筋出力に5秒間で達する漸増運動と逆に20・40・60%MVCの筋出力保持から5秒間で0%に達する漸減運動を、あらかじめPCの画面上に提示している力線図を追従する視標追従課題の2種類とした。なお,各運動課題は,数回の練習後,各条件をランダム2回ずつ試行した。また,被検者には,主観的運動感覚の内省報告をさせた。
データ処理は,異なる出力率間の比較のため得られた応答出力を100%MVCで正規化し,各目標値が100%MVCとなるように100/20・100/40・100/60倍した。追従能力の評価は,目標出力と応答出力の誤差面積と標準誤差を求めた。統計学的分析は,分散分析と多重比較Fisher’s PLSD法を用いて解析した。
【結 果】二元配置分散分析の結果,出力率と運動様式の要因において漸減運動の方が有意に追従能力の低下を示す傾向にあったが,交互作用での相殺効果が認められた。一元配置分散分析における多重比較を行った結果,20%漸減運動において最も追従能力が低い結果が得られた。また,被検者の内省報告からも結果とほぼ一致するような表現がみられた。
【考察】筋出力調節課題は,情報の入力・出力過程における神経―筋のCoordinationの評価として重要であると思われる。また,本実験での視標追従課題は,あらかじめPC上に力線図が描かれており,feedforwardによる運動制御の正確さも評価していると考えられる。結果は,20%漸減運動において最も追従運動の困難性を示した。これは,筋出力時より筋弛緩時の方が,脳血流量が増加する報告や運動単位の特性などが関与しているものと考えられる。つまり,異なる出力率・運動様式では、それぞれの運動制御特性が異なり,神経系コントロールの違いを示唆している。このことから,こうした筋出力調節のメカニズムを知り,トレーニングに応用することも必要であると思われる。
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© 2007 日本理学療法士協会
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