理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 4
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理学療法基礎系
温熱刺激による骨格筋の肥大機構とリハビリテーションへの応用に関する基礎的研究
*大野 善隆後藤 勝正
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抄録

【目的】筋細胞に対して温熱刺激を負荷すると、筋肥大が生じる。これまで、あらかじめ筋組織(細胞)に対して温熱刺激を与えてからトレーニングすると筋肥大が促進し、逆に負荷除去に伴う筋萎縮を軽減することが明らかになっている。さらに、廃用性筋萎縮からの回復も温熱刺激により促進されること、また、温熱刺激のみで筋肥大が引き起こされることも明らかになっている。したがって、これらのことから筋肥大に有効な温熱刺激を与えることは、筋力低下の予防や筋力増強につながると考えられるが、温熱刺激がどのようなメカニズムで筋肥大を引き起こすか未だ明らかでない。筋肥大には筋衛星細胞の活性化が関与していると考えられているが、その活性化機構は明らかとなっていない。一方、心筋の肥大においては、nuclear factor-κB(NF-κB)の活性化が関与しているとの報告がある。NF-κBの活性化は、interleukin-1β(IL-1β)、interleukin-6(IL-6)、tumor necrosis factor-α(TNF-α)、granulocyte/macrophage-colony stimulating factor(GM-CSF)などのサイトカインを誘導し、これらのサイトカインが心筋や平滑筋の肥大を引き起こすことが報告されている。しかしながら、NF-κBやこれらのサイトカインと筋衛星細胞の活性化ならびに温熱刺激による骨格筋肥大の関連性は明らかでない。そこで本研究は、温熱刺激による筋衛星細胞の発現量ならびにサイトカインの発現について検討し、温熱刺激による骨格筋肥大におけるサイトカインの関与を明らかにすることを目的とした。
【方法】実験には7週齢のWistar系雄性ラットを用い、温熱負荷群および対照群の2群に分類した。温熱負荷(38~41°C)後、1、3、7および14日後両群のラット後肢よりヒラメ筋を摘出した。ヒラメ筋の筋湿重量、筋乾燥重量、筋水分量、筋タンパク量ならびにNF-κB、IL-1β、IL-6、TNF-α、GM-CSFの発現量を測定した。また、筋衛星細胞の挙動を免疫組織学的手法により評価した。
【結果】温熱負荷7日後、ヒラメ筋の筋質重量、筋乾燥重量ならびに筋タンパク量の有意な増加が認められた(p<0.05)。しかし、両群の筋水分量に差は認められなかった。ヒラメ筋におけるサイトカインの応答は一様でなく、サイトカイン毎に異なる経時的変化を示した。また、温熱負荷により筋衛星細胞の一過性の活性化が認められた。
【考察】温熱負荷によって引き起こされる筋肥大には、サイトカインと筋衛星細胞の活性化が関与していることが示唆された。このことは、局所的な温熱刺激で全身的な筋肥大効果を得られる可能性が示すものと考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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