理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 6
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理学療法基礎系
家兎膝関節軟骨の加齢変化
*法田 奈津子黒木 裕士桑原 郁山口 将希岡 徹榊間 春利小林 雅彦中川 泰彰
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キーワード: 関節軟骨, 加齢変化, 形態学
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抄録

【目的】我々が調べた家兎膝関節軟骨硬度の加齢変化は2006年のOsteoarthritis&Cartilageに掲載された。軟骨変性を予防する理学療法を検討するためには加齢の影響を理解する事が重要であることから、今回は軟骨と軟骨下骨の厚さ、および軟骨細胞数を調べた。

【方法】所属大学動物実験委員会の承認を得て、3週、8週、24週、48週および120週齢の5群からなる日本白色家兎20羽(各群4羽)で研究を行った(承認番号 Med 04202)。安楽死後に家兎から左右の膝関節を取り出し、脛骨平原の内側中央部(MTP)、同外側中央部(LTP)、大腿骨内顆(MFC)、同外顆(LFC)の4部位から標本を採取した。標本を7日間中性フォルマリン固定後、3週間10%EDTA脱灰し、脱水後パラフィン包埋した。包埋標本から6μm厚の横断切片を作製し、ヘマトキシリンエオジン染色およびサフラニンO染色を行い検鏡した。4部位の軟骨と軟骨下骨の厚さ、および軟骨細胞数を調べた。切片はすべて3人の著者が確認した。計測データに左右差がないことを確認後、1元配置分散分析法および多重比較(Sheffe法)で5群を比較した.

【結果】軟骨の厚さには有意差を認めた(P < 0.05)。3週、8週、24週、48週および120週の各群のLTPの厚さはそれぞれ458μm、546μm、498μm、727μm および 999μmであった。MTPでは それぞれ675μm、884μm、870μm、1136μm および 1350μmであった。LFCではそれぞれ845μm、369μm、263μm、352μm および 433μm、MFCではそれぞれ825μm、507μm、541μm、527μm ならびに 784μmであった。軟骨下骨の厚さに有意差はなかった。軟骨細胞数には有意差を認めた(P < 0.05)。3週個、8週個、24週個、48週個および 120週の各群の軟骨細胞数は、LTPではそれぞれ191個、153個、137個、123個および 188個であった。MTPではそれぞれ249個、208個、179個、152個および 165個であった。LFCではそれぞれ322個、136個、84個、86個および 104個、MFCではそれぞれ376個、171個、129個、101個ならびに 126個であった。LFCとMFCでは、軟骨の厚さと軟骨細胞数は有意な正の相関が認められた(P < 0.01)。

【考察】軟骨の厚さには脛骨側と大腿骨側で部位差がある。脛骨側では3週で薄く、120週で厚い。これに対して大腿骨側では3週で厚かった軟骨がその後薄くなり、再び120週でやや厚くなる。単位厚さ当たり軟骨細胞数は3週で多く(0.37&#12316;0.46)、120週で低下する(0.12&#12316;0.24)。こうした加齢変化の報告は我々の知る限り皆無である。

【まとめ】ヒトと家兎は異なるが、本結果は高齢動物では軟骨損傷からの回復ポテンシャルが低下していることを示唆している。理学療法でも留意すべきエビデンスであると考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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