理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 69
会議情報

理学療法基礎系
母趾伸筋力と歩幅の関係
*伊坂 重人渡邊 昌宏今村 安秀
著者情報
キーワード: 母趾伸筋, 歩幅, 筋力
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】歩行において、足趾は身体を支え運動方向を誘導し推進するという重要な働きをしている。また、足趾機能は、高齢者の転倒や障害予防としても注目され、様々な研究が報告がされている。これらの報告は足趾屈筋力に関するもの多かったが、我々は第25回関東甲信越理学療法士学会において、母趾伸筋力と歩行速度の有意な正の相関関係を報告した。続報として、今回我々は母趾伸筋力と歩幅の関係について検討したので報告する。
【対象】対象は特に整形外科疾患の既往がない健康成年男性10名であった。(年齢28.1±3.4歳、身長173.7±4.7cm、体重65.5±5.6kg)実験参加前に十分な説明を行い、同意を得た上で行った。
【方法】母趾伸筋力の測定は、アニマ社製等尺性筋力計μTasF‐1を使用して、筋力計を自作して行った。筋力測定肢位は、端坐位で膝関節と股関節90°および足関節0°とし、足部を固定した。結果の再現性を確認するため、筋力を左右3回ずつ測定し、その平均値を体重で除し比較に用いた。歩行速度は、普通に歩く(以下通常速度)とできるだけ速く歩く(以下最大速度)の二種類とし、それぞれの口頭指示は、「普通に歩いてください」と「できるだけ早く歩いてください」とした。歩幅計測は、4mの予備歩行後、3mをソニー社製デジタルビデオカメラDCR-VX700で各速度2回ずつ撮影し、6~8歩の歩幅の平均値を算出し、身長で除して比較に用いた。筋力と歩幅の関係をピアソンの相関係数により解析した。
【結果】母趾伸筋力の平均値は44.5±18.5Nであった。また、通常速度の平均歩幅は66.5±8.78cmであり、最大速度の平均歩幅は82.7±11.4cmであった。各測定値間の相関においては、母趾伸筋力と最大速度の歩幅間に、有意な正の相関関係を認めた(r=0.70、 p<0.05)。しかし、母趾伸筋力と通常速度の間には、相関関係は認めなかった(r=0.53、p<0.05)。
【考察】今回の結果から、最大速度時に母趾伸筋力が高いものほど、歩幅が大きいことが示唆された。しかし、足趾伸筋力と通常速度時の歩幅の間には、相関関係は認められなかった。足趾屈筋力についての先行研究や、我々が行った研究においても、最大速度時と筋力の間のみに相関が認められた。また、蹴り出し期における母趾や足趾の重要性が報告されている。これらのことから、最大速度時において母趾伸筋は蹴り出しの安定化に関与し、これが歩幅延長につながったと推察した。今後の検討課題として、最大速度時の母趾伸筋を筋電図学的に検証することが必要と考えた。
著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top