抄録
【目的】
従来、心肺運動負荷試験(CPX)には起立型エルゴメータ(Upright Ergometer:UE)が使用されるが、近年では低運動耐容能者に対して半臥位型エルゴメータ(Semi-Recumbent Ergometer:SRE)が使用される傾向にある。しかし、双方の試験結果を比較した報告は少ない。そこで今回、異なるエルゴメータ使用による駆動姿勢の変化がCPX各指標に及ぼす影響について検討した。
【方法】
対象は同意を得た健常成人20名(男女各10名,年齢25±2歳)とした。
CPXはSRE(三菱電機社製 StrengthErgo.240)とUE(COMBI社製 AEROBIKE 75XL)にて、回転数60rpmのRamp負荷法(20watts/min)で実施した。呼気ガス分析はミナト医科学社製 エアロモニター AE300Sを用いbreath by breath法にて算出した。比較項目は嫌気性代謝閾値(AT)での酸素摂取量(AT-V(dot)O2)・負荷量(AT-Load)・心拍数(AT-HR)、最大運動時(Peak)での酸素摂取量(Peak-V(dot)O2)・負荷量(Peak-Load)・心拍数(Peak-HR)とした。また、負荷増加(Work Rate:WR)に対するV(dot)O2増加率として運動開始からATまで(?BV(dot)O2/?BWR)とATから呼吸性代償点(RC)まで(AT-RC?BV(dot)O2/?BWR)を算出・比較した。
統計解析はWilcoxonの符号付順位検定を行い、有意水準を0.05未満とした。
【結果】
ATにおけるSRE・UEの各指標には有意差を認めなかった。PeakにおけるSREはUEに比しPeak-Loadで有意に高値を示した(SRE vs UE:187±42watts vs 173±36watts)が、Peak-V(dot)O2・Peak-HRは有意差を認めなかった。また、?BV(dot)O2/?BWRは有意差を認めなかったが、AT-RC?BV(dot)O2はSREがUEに比し有意に低値を示した(SRE vs UE:10.3±1.5 vs 11.1±1.5)。
【考察】
本研究より、異なるエルゴメータ使用による駆動姿勢の変化はATにおけるCPX各指標には影響を与えないが、Peakにおいては差異を生じさせる可能性が示唆された。
一般的にV(dot)O2は運動における動員筋活動量に影響するとされている。負荷増加に伴いSRE・UEともに動員筋活動量が増加するが、ATにおいては双方のCPX各指標に有意差を認めなかった事から、動員筋活動量が同等であったと思われた。一方、PeakにおいてはSREがUEに比しPeak-Loadで有意に高値を示したにも関わらず、AT-RC?BV(dot)O2/?BWRは低値を示し、Peak-V(dot)O2に有意差を認めなかった。これは、SREはバックレストの存在によりUEに比し脚伸展筋活動量を得やすいものの、姿勢保持としての上肢や体幹の筋活動量の増加は少なく、結果的に全身での動員筋活動量が同等であったためと思われた。
本研究ではSRE・UE駆動中の筋活動については測定していない。よって今後は双方での筋活動量変化の差異に関して比較・検討する必要がある。