理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 515
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理学療法基礎系
部分免荷トレッドミル歩行による姿勢の変化
*磯 あすか
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抄録
【目的】近年、部分免荷トレッドミル(BWST)を使用した歩行エクササイズが取り入れられるようになっている。その効果については、歩行パターンの左右差が減少するなど様々な報告がある。我々はBWSTを使用するなかで、体幹の正中化が容易になり、それが重心移動を円滑にするという臨床的印象を持っている。今回、BWSTを用いた歩行エクササイズが体幹の姿勢へ与える影響について確認するため、本研究を行った。
【方法】健常成人13名(男性10名、女性3名)を対象とした。10分間のBWST歩行(20%免荷、3.6~4.0km/h)を行い、その前後で片脚立位における体幹の姿勢を比較した。使用機器は空気圧式部分免荷装置Pneu-Assist(インターリハ社製)とトレッドミル(Zebris社製)、評価にはポスチャー分析システム(インターリハ社製)を用いた。姿勢の計測は、被験者の身体各部位にマーカーを貼付し、左右の片脚立位姿勢をデジタルカメラで撮影した。撮影画像から、第8胸椎棘突起-立脚側踵を結んだ線と垂直線の角度(Th角度)、左右の肩峰-立脚側踵を結んだ線と垂直線の角度(肩峰角度)、左右のPSIS-立脚側踵を結んだ線と垂直線との角度(PSIS角度)を求めた。Th角度、左右肩峰角度、左右PSIS角度を体幹の指標として、それらの値をBWST歩行前後で比較検討した。
【結果】BWST歩行前後におけるTh角度、左右肩峰角度およびPSIS角度に有意差はみられなかった。片脚立位時のTh角度は、一側で減少し反対側で増加するパターンが最も多く、次いで両側とも増加するパターンが多かった。前者のパターンでは、Th角度が減少した側の肩峰角度、PSIS角度のどちらか一方、あるいは両方が減少していた。
【考察】今回、BWST歩行により体幹の正中化が得られるという臨床的印象を裏付ける結果は得られなかった。BWST歩行エクササイズ後に片脚立位時のTh角度が一側で減少し反対側で増加するパターンが最も多かったことから考えると、BWST歩行により片脚立位時のストラテジーを助長してしまった可能性もある。しかし、臨床場面における視覚的評価では、骨折患者の部分荷重期や片麻痺患者などBWSTを取り入れた歩行を実施した例で体幹の非対称性が減少し、歩容の改善が得られることも少なくない。それらの症例では、今回の被験者と比較して体重負荷の変位が大きいことが多く、そのためBWST歩行エクササイズによって左右対称な荷重感覚が入力され、歩容の改善につながったとも考えられる。今後BWST歩行の効果の検討を進めると同時に、BWST歩行エクササイズの適応についても明確にする必要があると考える。
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© 2007 日本理学療法士協会
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