理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 518
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理学療法基礎系
トイレ動作自立度と機能障害および立位バランスとの関連性
*山本 美幸新谷 和文臼田 滋
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抄録

【目的】排泄は人間の尊厳に関わる動作であり、患者様・家族のリハビリテーションに対する希望ではトイレ動作の自立は多く聞かれ、退院先を決定する一要因である。本研究は、トイレ動作自立度の関連因子を検討することである。

【方法】対象は、研究に同意の得られた27名(中枢神経疾患22名、整形疾患5名)で、平均年齢は73.0±10.3歳であった。対象者に対し、Functional Independence Measure(以下FIM)のトイレ動作自立度、Functional Reach(以下FR)、握力、大腿四頭筋筋力(Handheld Dynamometer)、Optical Righting Reaction(以下ORR)、Trail Making Test Part A(以下TMT-A)を調査・測定した。

【結果・考察】(1)FIMのトイレ動作の自立度は、完全自立5人、修正自立7人、監視1人、最小介助2人、中等度介助1人、重度介助5人、全介助6人であった。FRは12.0±10.8cm、握力は左右合計11.9±10.3kg(健側9.7±7.5kg、患側2.2±4.5kg)、大腿四頭筋筋力は左右合計15.5±9.9kgf(健側11.1±6.7kgf、患側4.4±4.4kgf)、ORRは左右合計3.2±2.0(健側1.8±1.1、患側1.4±1.1)、TMT-Aは 442±159秒であった(健側とは高い方の値、患側とは低い方の値とした)。(2)トイレ動作の自立度との相関はスピアマンの順位相関係数において、FR r=0.80、握力 合計 r=0.70、健側 r=0.64、患側 r=0.42、大腿四頭筋筋力 合計 r=0.79、健側 r=0.74、患側 r=0.59、ORR 合計 r=0.71、健側 r=0.72、患側 r=0.67、TMT-A r=-0.64であった。 また、機能障害の測定項目を説明変数に重回帰分析を行った結果、回帰式はトイレ動作自立度=0.32(握力)+0.15(大腿四頭筋筋力)+0.34(ORR)-0.34(TMT-A)、R2=0.72であった。 上記のことから、上下肢体幹機能、注意機能、立位バランス全ての能力が大切であり、その中でも特に立位バランス能力の重要性が示唆された。また、理学療法を行う際には、両側(特に健側)へのアプローチが必要であることが示唆された。(3)トイレ動作自立の可否に対するFRのカットオフ値を検討した。トイレ動作自立群21.5±4.8cm、トイレ動作非自立群4.3±7.6cmであった。カットオフ値を16cmとすると、トイレ動作自立に対する感度は92%、特異度は93%であり、カイ二乗検定では統計学的に有意であった。よって、トイレ動作を自立するためには、FRが16cm以上可能であることが一指標となる。

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© 2007 日本理学療法士協会
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