理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 546
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理学療法基礎系
股関節の可動性とスイング速度の関係
インサイドキックに着目して
*竹内 明禅高松 真理子竹内 直人用皆 正文中村 裕樹
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抄録

【はじめに】サッカーにおいてキックの技術は重要かつ最も基本的な技術である。その中で、インサイドキック(以下、IK)は他のキックより膝関節等の動きがさほど関与しない為、股関節の可動性が重要なキックであると考えられている。しかし、股関節筋力とキックスピードの関係についての報告はあるが、関節の可動性とスイング速度の関係についての報告は少ない。
今回、3次元動作解析装置を用いて股関節の可動性とキックスイング速度との関係について研究し、若干の知見を得たので考察を加え報告する。
【対象と方法】対象は下肢に問題がない鹿児島県社会人サッカーチームに所属する選手30名(男性)とし、平均年齢25±2.9歳、蹴り足:右側24名・左側6名であった。方法として関節可動域(以下、ROM)訓練前後で蹴り足側の股関節のROMをゴニオメーターにて実測した。ROM訓練は関節運動力学における関節内運動を考慮して実施した。次に超音波式3次元動作解析装置(Zebris社製)を用いてIK時のスイング速度を訓練前後2回ずつ計測し、平均値をデータとした。キック動作はワンステップとし、ボールからの距離を計測して助走距離を同じにした。以上より訓練前後での股関節の可動域とスイング速度を対応のあるt検定を用い比較検討し、股関節の可動域の変化とスイング速度の変化値をピアソンの積率相関分析を用いて分析した。
【結果】1.スイング速度及び股関節の可動域は訓練前と比較して訓練後が有意に増加した(p<0.01)。2.股関節外旋・屈曲の可動域のみスイング速度の変化した値に高い相関を認めた(r=0.82・0.72)。
【考察】まず、布目によるとIK時に股関節の伸展・外旋・屈曲・内旋とういう連動した動作をスムーズに行うことでスイング速度を早めることができ、可動域の向上とスイング速度は比例するとある。今回の結果から股関節の可動性を改善することで運動を円滑に行うことが可能となり、バックスイング期からフォロースルー期までの一連のスイング動作がスムーズになったと考えられ、関節の量的な改善はスイング速度に影響することが示唆された。
また、IKの蹴り方は加速期に股関節外旋を行うことで足部内側をボールに合わせる。その後、フォロースルー期までボールに対して前方への速度を与える為にはこの外旋を維持したまま股関節を屈曲していく必要がある。結果2からも股関節外旋・屈曲がスイングスピードへの関与率が高いことが推察される。
今回、3次元動作解析装置を用いてサッカー選手に対する股関節の可動性とスイング速度との関連性を客観的数値より検証した。そこで、筋力に対するアプローチ以外にも関節の可動性を向上させることでスイング速度が増加することが分かった。今後は、可動域だけでなく神経・筋力の関与も考慮しつつスイング速度が向上する方法を検討する必要があると考える。


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© 2007 日本理学療法士協会
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