理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 551
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理学療法基礎系
ステッパーによる足踏み運動の特性
運動強度とエネルギー消費量について
*宅間 豊宮本 謙三井上 佳和宮本 祥子竹林 秀晃岡部 孝夫滝本 幸治
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抄録

【目的】足踏み式室内運動器(以下,ステッパー)は,室内で簡便に使用できる運動用具である。この運動用具はスポーツ用品店や通信販売で容易に購入できることに加え,使用にあたっては天候に影響されないことやテレビを鑑賞しながら行えることなど,室内用具ならではの利点も多いため,愛好者も少なくないようである。ステッパーを用いる足踏みは下肢を主体とする律動的な全身運動になるため,ウォーキングに近似した運動様式とみなせるが,その特性や効果に関しては明らかではない。そこで,トレッドミル歩行との比較によって,ステッパーによる足踏み運動の特性を調べることを目的とした。
【方法】被験者は実験に同意の得られた男子学生6名であった。ステッパーによる足踏み(以下,ステッパー群)とトレッドミルによる歩行(以下,トレッドミル群)は,それぞれ3分間の立位保持後に15分間行った。ステッパー群は快適歩行をイメージした足踏みの頻度,トレッドミル群は快適速度による水平歩行を条件とした。なお,被験者全員がステッパーとトレッドミルの両方を異なる日に行った。運動強度は呼吸代謝測定装置(チェスト社)によってMETSを求め,また大腿四頭筋と下腿三頭筋の主観的運動強度(RPE)もBorg Scaleにより測定した。エネルギー消費量は酸素摂取量からカロリー消費量を求め,また運動量として15分間の総歩数も測定した。
【結果】平均METSは,運動前立位および運動時3・6・9・12・15分目の各時点においてステッパー群で各々1.3・3.1・3.2・3.6・3.6・3.4 METS,トレッドミル群で各々1.4・4.3・4.2・4.4・4.6・4.4 METSを示し,繰り返しのない二元配置分散分析と多重比較検定の結果,両群共に運動時は運動前立位に比べ有意に高い強度を示した(p<0.01)。各時点でのMETSの2群間比較では,対応のあるt検定の結果,いずれも有意差を認めなかった。運動終了時の下肢RPEの中央値は大腿四頭筋がステッパー群で12.5,トレッドミル群で11,下腿三頭筋がステッパー群で13,トレッドミル群で12を示し,Wilcoxonの符号付順位検定の結果,どちらの筋も2群間に有意差を認めなかった。一方,平均カロリー消費量はステッパー群で54.5kcal,トレッドミル群で70.3kcal,平均総歩数はステッパー群で1180.8歩,トレッドミル群で1696.5歩となり,対応のあるt検定の結果,2群間において総歩数では有意差(p<0.05)を示したが,カロリー消費量では有意差を認めなかった。
【考察】今回の実験条件では,ステッパー群の生理的および主観的運動強度とエネルギー消費量がトレッドミル群のそれらと同等であることが確認できた。よって,ステッパーによる足踏み運動は快適速度によるウォーキングの代用運動として期待できるかもしれない。

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© 2007 日本理学療法士協会
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