理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 554
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理学療法基礎系
地域在住高齢者における直立時の足趾接地の実態
*恒屋 昌一芝山 江美子南里 有希吉沢 昌宏山西 加織臼井 永男
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抄録

【はじめに】筆者らは,足趾接地について独自の判定法を開発し,それをもとに,地域在住の健常な青壮年者を対象に直立時の足趾接地の実態等について本学会に報告してきた.今回,介護予防の取り組みも視野に入れた現代の高齢者の直立時の接地足裏に関する基礎的な資料を得ることを目的に,地域在住の高齢者の足趾接地の実態を調査し若干の知見を得たので報告する.
【対象】埼玉県北部のK町と隣接する群馬県H市に在住する60歳以上の直立能力に影響を及ぼす疾病等のない地域在住の高齢者で,本研究の主旨を説明し測定に同意を得た男性19名(平均年齢74.3±6.0歳),女性71名(平均年齢71.7±6.6歳)の計90名180足.
【方法】ピドスコープ(スタビロスコープ:パテラ研究所製)上に被験者を直立させ,(1)視点を注視した安楽な開眼閉足位(自然閉足位)および,(2)モニター上に映し出される接地足裏画像をみながら足趾が十分接地するよう努力した閉足位(努力閉足位)にて,動揺が安定した時点の接地足裏画像を抽出した.抽出した足裏画像について,足趾接地の判定は1趾につき,グレードG:完全接地,グレード P:不完全接地,グレード F:無接地=浮き趾とし,個体における総合的判定として,タイプ1:両足のすべての足趾がG,タイプ2:両足のいずれかの足趾にPあり,タイプ3:片足に単独もしくは複数の趾にFあり,タイプ4:両足の小趾にのみFあり,タイプ5:両足に単独もしくは複数の趾にFあり,タイプ6:他趾の状態にかかわらず,両足拇趾にPないしFあり,の6つの足趾接地タイプ(筆者ら,理学療法学Vol.33,No.1,2006)に分類しその出現率を求めた.
【結果・考察】自然閉足位においては,女性では,タイプ1~6までのすべてのタイプの出現をみたが,男性では,タイプ1~3のみがみられ,タイプ2以上の足趾接地になんらかの問題を有するものは男性では52.6%,女性では57.8%と,全体的には,高齢者においても青壮年者同様(第39回大会にて報告),男性より女性に足趾接地に問題がある傾向がみられた.また,努力閉足位では,男性の94.7%,女性の80.3%がタイプ1の接地良好を示したが,一方で,男性の5%強,女性の2割弱に,浮き趾などがみられ,足趾接地の状態が不良であることが判明した.本データと過去に筆者が報告した青壮年者(10代後半から40代)の実態と比べると,高齢者においても,男性より女性に足趾接地に問題がある傾向がみられるものの,高齢者では,青壮年者よりは,足趾の接地が良好であることがわかった.今後は,足趾の接地のみならず,接地足裏の全体の問題や足趾接地に影響を与える地域環境や生活習慣などの因子を検討するとともに,介護予防の展開においては,これらの高齢者の足趾接地の実態を念頭におく必要があることが示唆された.

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© 2007 日本理学療法士協会
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