理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 560
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理学療法基礎系
運動感覚と脳磁界反応について
*大西 秀明相馬 俊雄大山 峰生亀山 茂樹大石 誠黒川 幸雄
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キーワード: 脳磁図, 運動感覚, 随意運動
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抄録

【目的】
脳波計や脳磁界計測装置を用いることにより大脳皮質の活動を非浸襲的に計測することができる.どちらも脳活動を客観的に計測することができるが,脳磁場は頭皮や頭蓋骨,髄液の影響を受けないため,脳波よりも活動部位をより正確に捉えることができる.自発運動の際にも一連の脳磁界反応を計測することができ,自発運動時に計測された脳磁場を運動関連脳磁場(Movement related cerebral fields, MRCF)という.MRCFは,運動準備磁場,運動磁場,運動誘発磁場(Movement evoked Field, MEF)第一・第二・第三成分から構成されるのが一般的である.MEFは運動直後に誘発される脳活動を捉えたもので運動感覚を反映していると言われているが,その感覚受容器や電流発生源については未だ明確でないのが現状である.本研究目的は,MEF1の意義を検討することである.
【方法】
対象は予め同意の得られた健常男性8名(25.6±6.0歳)であった.MRCFの計測には,306チャネル全頭型脳磁界計測装置(Neuromag, Elekta, Finland)を使用し,通常の示指伸展自発運動(課題1)と関節運動が少ない示指伸展運動(課題2)の2種類を運動課題として,MRCFおよび示指伸筋の筋電図を記録した.MRCFの解析には,運動開始を感知するLEDトリガーシステムを利用し運動開始2秒前から運動開始後1秒までの期間を対象としてオンラインで50回以上の加算平均を行い,0.5Hzから10Hzのバンドパスフィルタ処理を行った.なお,統計処理には対応のあるt-検定を用い,有意水準を5%とした.
【結果】
課題1ではMEF1の振幅が82.0±21.2fT/cmであり,課題2のMEF1振幅(69.7±20.5fT/cm)に比べて大きな傾向を示した(P=0.08).また,運動開始からMEF1ピークまでの潜時は課題1において53.3±12.0msecであり,課題2の28.2±7.2よりも有意に長かった(P<0.01).
【考察】
我々はMEF1が筋紡錘の活動を反映している可能性が高いことを過去に報告してきた.本研究結果において,MEF1の振幅が運動の大きさに影響されて変化することが示され,過去の報告を支持するものであると考えられる.一方,運動範囲が小さな課題においては潜時が短くなっていた.このことは,筋収縮が継続している間,運動野の活動と感覚野の活動がそれぞれ同時に起こっており,両領域の活動の強弱により運動開始直後の磁場波形が形成されることを示唆している.すなわち,MEF1波形を解析するにあたり,運動野の活動の有無を考慮する必要があることが示唆された.

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© 2007 日本理学療法士協会
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