理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 563
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理学療法基礎系
手指自発運動における運動誘発脳磁場第一成分について
体性感覚誘発磁場との位置関係の比較
*相馬 俊雄大西 秀明大山 峰生黒川 幸雄大石 誠亀山 茂樹
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抄録

【はじめに】大脳皮質の感覚運動野には,体部位局在関係がある.しかし,近接した部位の自発運動による運動関連脳磁場(MRCF)を計測し,電流発生源を比較している報告は少ない.本研究の目的は,手指自発運動時における運動誘発脳磁場第一成分(MEF I)の電流発生源を明らかにすることである.
【対象と方法】対象は,インフォームドコンセントの得られた健常成人男性6名(平均年齢34.2±10.6歳)であった.測定には,Neuromag社製306チャネル脳磁界計測装置を使用し,安静座位にて計測を行なった.運動課題は,右手における示指の近位指節間関節屈曲運動(Index-flex),示指の中手指節関節伸展運動(Index-ext),小指の中手指節関節外転運動(Little-ab)の3種類とした.各課題動作におけるMRCFを計測し,それぞれ50回以上の加算平均処理を行なった.また,運動課題を遂行している筋の支配神経である正中,橈骨および尺骨神経に対して体性感覚誘発磁場(SEF)を計測した.SEFは,正中神経および尺骨神経は手関節掌側部において,橈骨神経は手関節背側部にて,感覚域値の3~5倍の強度で電気刺激(1.5Hz)を行い,300回以上の加算平均処理を行なった.サンプリング周波数は1kHzで,バンドパスフィルターをMRCFは0.5Hzから20Hz,SEFは10Hzから100Hzで処理を行なった.導出されたMRCFにおける運動磁場(MF),MEF IおよびSEFから等価電流双極子(ECD)を算出し,goodness of fit値が90%以上を解析対象とした.また,各運動課題におけるMFおよびMEF IのECD位置は,運動課題に関連する神経刺激後に導出される正中神経刺激後に導出されるSEFの20msec前後にみられるN20mのECD位置を基準として比較検討した.
【結果と考察】MEF Iの電流発生源については多くの議論がなされているが,本実験の結果から,3種類のSEF早期成分ECDと3種類の自発運動課題におけるMEF IのECDの位置関係が,上下方向で明確な差がみられなかったことから,MEF Iの電流発生源が3b野の活動であると推察される.また,SEFとMEF Iにおいては,ECDの位置はIndex-flexと正中神経,Index-extと橈骨神経,Little-abと尺骨神経が,それぞれ対応した位置関係を示した.このことから,MEF Iが拮抗筋の伸張や皮膚の伸張による影響でないことが推察され,運動課題の違いにより,MEFIを分離して計測できる可能性が示唆された.一方,MFにおいては3種類の自発運動課題で6名の被験者から一定の位置関係は認められず,今後の検討課題としたい.

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© 2007 日本理学療法士協会
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