理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 625
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理学療法基礎系
ブリッジ動作初期での極軽度殿部挙上とブリッジ動作における体幹・下肢筋の筋積分値の違いについて
開始肢位での股関節屈曲角度変化による検討
*大沼 俊博渡邊 裕文藤本 将志赤松 圭介中道 哲朗鈴木 俊明
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抄録
【はじめに】腰椎疾患患者に対して背臥位でのブリッジ動作により多裂筋の等尺性収縮を促し、腰椎椎間関節の安定性向上を図ることがある。しかし腰部などに疼痛や股関節伸筋群、多裂筋に筋力低下を認める場合、充分な殿部挙上が困難となる。このとき臨床上我々は前段階として極軽度の殿部挙上により多裂筋の等尺性収縮を促している。我々は先行研究において背臥位での極軽度殿部挙上が体幹・下肢筋の筋積分値に与える影響について、開始肢位の股関節屈曲角度変化により検討した。そこで今回我々は背臥位での極軽度殿部挙上とブリッジ動作における体幹・下肢筋の筋積分値の違いについて、開始肢位での股関節屈曲角度変化により検討し、若干の知見を得たので報告する。
【対象・方法】整形外科、神経学的に問題のない健常男性7名を対象とした。平均年齢は27.8歳であった。まず被検者に安静背臥位を保持させた。そして筋電計ニューロパックを用いて双極導出法にて右側多裂筋、大殿筋、半腱様筋、腹斜筋群(内・外腹斜筋重層部位)の筋積分値を測定した。測定時間は10秒間とし、3回測定した。次に足底接地下で両股関節屈曲角度を60°、45°、30°位と変化させた。そして各肢位において矢状面から上前腸骨棘上に貼付したマーカーが、1.5cm上方移動する位置での殿部挙上(以下極軽度挙上)および矢状面からみて股関節屈曲伸展中間位での殿部挙上(以下ブリッジ)にて上記同様各筋の筋積分値を測定した。そして開始肢位での股関節屈曲角度変化におけるそれぞれの課題の筋積分値相対値について比較検討を行った。なお対象者には本研究の目的・方法を説明し、同意を得た。
【結果・考察】多裂筋および大殿筋の筋積分値相対値は開始肢位での股関節屈曲角度変化に関わらず、極軽度挙上時と比較してブリッジ時に増大した。また半腱様筋および腹斜筋群は極軽度挙上時とブリッジ時との比較において変化を認めなかった。Daviesによると背臥位での殿部挙上時は、背筋群、股関節伸筋群が関与すると述べている。また伊藤らは、多裂筋は、腰椎椎間関節の適合と脊柱の安定に関与すると報告している。さらに川野は、ブリッジ練習においてはハムストリングス、大殿筋が股関節の伸展作用に関与すると報告している。今回のブリッジにおいて、殿部挙上位の増大に伴う腰椎・股・膝関節屈曲方向への働き(体幹・殿部が床へ落ちようとする働き)に対し、多裂筋は腰椎伸展作用として腰椎椎間関節の適合と脊柱の安定に、また大殿筋は股関節伸展作用として股関節の中間位保持に関与し、増大したと考える。半腱様筋については股関節伸展・膝関節屈曲作用として股関節の中間位保持・膝関節の屈曲位保持に、さらに腹斜筋群は体幹の姿勢保持に一定の筋活動にて関与したと考える。
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© 2007 日本理学療法士協会
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