理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 628
会議情報

理学療法基礎系
ストレッチング法の違いが筋形状変化に及ぼす影響
*隈元 庸夫伊藤 俊一山本 巌阿部 康次藤原 孝之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
ストレッチングには静的,動的,PNFを用いたストレッチングの三大手技がある.その効果に関しては多数報告があるが,実際のヒト生体内の筋形状変化から手技の違いによる影響を比較した報告は皆無である.
本報告の目的は,非侵襲的に可視化が可能な超音波法を用いて,ストレッチングによる筋形状変化を比較検討することである.
【方法】
本実験の同意を得た健常男性10名を対象とした.ストレッチングは理学療法場面で対象となることの多い右足関節底屈筋に対しての静的ストレッチング(SS)とPNF手技のhold relax(HR)の2種類とした.いずれもランダムに多用途筋機能評価運動装置(BIODEX SYSTEM3,Biodex Medical Systems;トルクマシーン)を用いて施行した.各ストレッチング前後にトルクマシーンによって他動的な背屈位保持を行い,その際の右腓腹筋画像を超音波診断装置(EUB415,HITACHI)と7.5MHzリニア式プローブ(EUP-L33,HITACHI)を用いてBモード超音波法で撮影した.測定部位は右腓腹筋内側頭の停止腱と筋束のなす角(羽状角)が画面上で確認できる部位とした.画像処理ソフト(Scion Image Beta 4.02)の角度測定ツールを用いて撮影した画像上での羽状角を計測した.同時に背屈位保持に拮抗する底屈筋のトルク値(足底への押し付け力)をトルクマシーンで計測した.計測した羽状角と押し付け力の変化とその相関を各ストレッチング前後で比較しSSとHRの違いについて検討した.統計処理にはWilcoxon t testとSpearmanの相関係数を用いて有意水準は5%未満とした.
【結果と考察】
羽状角と足底への押し付け力の変化はSSとHRを比較して有意差を認めなかった.しかし羽状角と足底への押し付け力の関係はSSで負の相関をHRで正の相関を認めた.超音波法を用いた検討として,我々は他動運動での受動的張力発生による足底への押し付け力増加と羽状角の減少つまり負の相関性を,福永らは随意的筋収縮での羽状角の増加つまり正の相関性を報告している.Hold relaxについては中枢神経系に与える影響としてヒラメ筋H波を用いた検証から脊髄興奮準位の低下が報告されている.しかし逆にストレッチング後の自発放電のため筋がリラックスしない,強い収縮後には興奮性の高まりが生じるとの報告も見られる.
今回の実験の結果に限局すれば,筋形状変化のマクロ的な特性としてHRではSSでの受動的張力の発生とは異なる複雑な中枢神経系による影響が関与している可能性が示唆された.今後,筋形状のみならず筋腱移行部の移動量を調査し腱の伸張による影響を加味し検討していく.

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top