理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 630
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理学療法基礎系
modified Ashworth scaleの検者間信頼性に関する継続研究
5名の検者による上下肢4筋群に関する分析
*中山 恭秀粂 真琴川井 謙太朗木山 厚伊藤 咲子宮野 佐年
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抄録

【背景】これまでに肘関節屈筋群について5名の検者間一致率で検討し、完全一致率が5割程度であるが、2グレード以上の誤差を生じる可能性が5%未満という知見を示し、その誤差要因を分析し報告している。課題として他の代表的な筋群における検討とした。
【目的】5名の理学療法士で、代表的な上下肢筋群の痙縮測定をmodified Ashworth scaleにて測定し、広い検者間による測定制度を示すことを目的とする。
【対象】測定は手関節掌屈筋群(以下手関節)、肘関節伸筋群(以下肘関節)、膝関節伸筋群(以下膝関節)、足関節底屈筋群(以下足関節)で行なった。対象は当院入院患者で検者全員が4筋群全てにおいて0(筋緊張増加無し)と判断しなかった16名20肢(脳出血6名、脳梗塞6名、脳挫傷、後縦靱帯骨化症、髄膜炎、多発性硬化症が各1名、平均年齢56.2歳)である。本研究は当大学倫理委員会の審査、患者の同意を得ている。
【方法】検者5名の理学療法士は、平均経験年数7.6年、男性3名、女性2名である。測定方法は肘関節について示してある原典の方法を基本として、諸々の報告を参考に作成した。肢位は背臥位とし、測定対象筋群を把持するなどの刺激を加えないように配慮した。手順はランダムで、1秒間で関節運動を5回行ない各自が記録し、情報交換を禁止した。分析は5名10通り、計200サンプルで、1)重み付け一致率、2)完全一致率、3)順位相関、4)2グレード以上の誤差発生率を求めた。一致率はWeighted kappaを用い測定誤差の幅を配慮した。
【結果】1)手関節で.44(.79~.15)、肘関節で.66(.85~.54)、膝関節で.27(.61~.03)、足関節で.21(.50~.02)であった。2)手関節で42%、肘関節で50%、膝関節で47%、足関節で25%であった。3)手関節で.74(.86~.59)、肘関節で.77(.88~.63)、膝関節で.38(.73~.10)、足関節で.52(.67~.30)であった。4)手関節で26%、肘関節で2%、膝関節で12%、足関節で36%であった。
【考察】Sloan(1992)が報告している上肢に比べて下肢の信頼性が劣るとする指摘を支持する結果となった。肘関節については、前回の報告とほぼ同様の結果であり、誤差幅を考慮することで高い信頼性があるといえる。しかし、手関節、膝関節、足関節の測定についてはそれぞれ信頼性向上の検討を要する。完全一致率では、足関節を除いた他の筋群で中等度の完全一致率を得ることができたが、順位相関では膝関節において特に低い結果であった。また、肘関節以外の全てにおいて、2グレード以上の誤差を生じる確率が少ないとは言い難いものであった。膝関節の順位相関が低かった点、また、足関節の完全一致率が低かった点と2グレード以上の誤差を生じる確率が高かった点について、今後患者データを基に誤差を生じる要因を分析する必要性を感じる。これにより、今後部位別での測定法の注意点などが示せればと考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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