理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 638
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理学療法基礎系
継ぎ足歩行の歩行周期の特徴
歩行速度の異なる2種類の通常歩行との比較
*下井 俊典上田 和磨加藤 隆文木元 優香里平山 尚美
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抄録

【目的】一般的に, 歩行速度の減少に伴い, 1歩行周期に対する同時定着時期比率, 立脚相比率は延長する. 継ぎ足歩行と通常歩行の歩行周期を比較した我々の先行研究で, 継ぎ足歩行は通常歩行に比べて歩行速度が遅いものの, 同時定着時期比率, 立脚相比率に違いがみられなかった. そこで本研究では, 通常の歩行速度による通常歩行に加え, 歩行速度を継ぎ足歩行と同様とした歩行と継ぎ足歩行との歩行周期を比較し, 継ぎ足歩行の特徴を, より明らかにすることを目的とした.
【方法】下肢に障害のない健常男子学生11名(年齢21.4±0.9歳)を対象とした. まず, 6mの継ぎ足歩行(以下, tandem)と10mの通常歩行(以下, normal)の歩行速度を測定した. 次に, 予め裸足になってもらった被験者の両足底(踵部, 母趾球部)に感圧センサ(DKH社製S100)を貼付し, 得られたon/off信号をA/D変換器(Power Lab/8SP)を介し, パーソナルコンピュータに記録した.得られた継ぎ足歩行の歩行速度と同じ速度による歩行(以下, slow)と, tandem, normalの3条件の歩行課題をランダムに選択し, 歩行周期を測定した.尚, 歩行周期の測定対象側は, 利き足の反対側とした.継ぎ足歩行は, 幅2cm, 長さ3mのテープ上から足部を逸脱させずに, 爪先に他側の踵を付けて接地させた.記録したon/off信号から, 1歩行周期, 同時定着時期, 立脚相, 踵接地‐足底接地, 踵接地‐踵離地を同定し, 各相の1歩行周期に対する比率を算出した.
【結果】歩行速度, 1歩行周期時間について, normalはtandem, slowと比べて有意に速かった(p<0.05).同時定着時期比率, 立脚相比率について, slowはtandemとnormalに比べ有意に延長していた(p<0.05).踵接地‐足底接地比率については主効果を認めなかった.踵接地‐踵離地比率は、tandem, slow, normalがそれぞれ56.0±4.2%, 49.7±4.9%, 42.0±4.7%となり, それぞれに有意差を認めた(p<0.05).
【考察】歩行速度を継ぎ足歩行と同一とした歩行との比較において, 継ぎ足歩行の同時定着時期比率, 立脚相比率がそれぞれ短縮し, 踵接地-踵離地比率が延長することが認められた.
【まとめ】継ぎ足歩行の歩行周期の特徴として, 歩行速度が遅いにもかかわらず, 通常歩行速度の歩行と同様の同時定着時期比率, 立脚相比率となることが明らかとなった. さらに, 継ぎ足歩行は, 一側の下肢を踏み出して支持基底面を変更してから, 重心を移動するという順序が明確であるため, 通常歩行と比べて踵接地-踵離地比率が延長するという特徴を有していることが明らかとなった.

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© 2007 日本理学療法士協会
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