理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1248
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理学療法基礎系
底屈制動短下肢装具Gait Solutionが歩行機能に及ぼす影響
*大畑 光司市橋 則明南角 学三戸 由美子高木 彩森 公彦宮坂 淳介
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抄録

【目的】底屈制動短下肢装具Gait Solutionは脳卒中後片麻痺患者の歩行改善のために開発された油圧制動式短下肢装具である。この装具の特徴は油圧による抵抗モーメントによって,立脚初期の前脛骨筋の遠心性収縮を補助し、下腿の前方へ円滑な引き出しを補助することである.しかし足関節の制動が行える他の装具との比較やGait Solutionがどのような歩行で適応となるかについてなど実際に使用する上での指針となる報告は少ない.本研究の目的はGait Solutionと他の装具を装着したときの筋活動変化から,各装具の特性についての知見を得ることと,Gait Solutionの歩容による変化を調べ,この装具の適応について考察することである.
【方法】対象は健常成人6名(男性4名,女性2名,平均年齢26.8±3.9歳、身長169.7± 5.3cm,体重59.3±4.41kg)を対象とした.被験者にトレッドミル上で2km/hで歩行させ、装具なしで歩行した場合と,固定装具(以下SB),底背屈制動短下肢装具(オルソ製Dream Brace以下DB),底屈制動短下肢装具(川村義肢社製Gait Solution Design:以下GS)を使用した場合の筋電図を測定した。Gait Solutionについては油圧ダンパーの抵抗値を4段階に変化させ、それぞれの筋電図を測定した。また,Gait Solutionを用いて,外旋歩行(足角を45度以上にした歩行),前揃え歩行,後揃え歩行,および小刻み歩行の4条件で歩容を変化させたときの筋電図も同時に測定した.筋電図測定にはニホンサンテク社製筋電計を用い,右下肢の前脛骨筋(TA),腓腹筋(GC),ヒラメ筋(SO)の筋電図を測定した。筋電図と同期してフットスイッチを踵と母趾に貼付し,歩行の周期を同定した.筋電図は50msの積分筋電図とし,立脚期における各筋の最大値を求め,最大等尺性収縮を100%としたときの割合で表した.装具および歩容による立脚初期の積分筋電図値の変化をFriedman検定により比較した.
【結果と考察】足関節周囲筋の筋活動の装具による変化はTAにのみ有意に認められた(p<0.05).装具無し歩行のTAが13.9%となったのに対し,SBが5.5%と最も低くなり,次いでDB9.1%となった.GSは油圧の段階に応じて変化し,1段階目では11.9%,2段階目では10.1%,3段階目では6.6%と順に低下していた.歩容を変化させた場合,外旋歩行や前揃え歩行ではGSにより前脛骨筋活動が低下する傾向にあるが,後揃え歩行や小股歩行ではGSによる変化は少なかった.油圧で抵抗値を変化させられるGSはより患者の特性に合わせた調節が可能であるが,同時にGSを効果的に使用できる歩行の仕方についての指導が重要であることが示唆された.

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© 2007 日本理学療法士協会
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