理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1253
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理学療法基礎系
骨軟骨移植術後の関節軟骨硬度指標と理学療法
*黒木 裕士中川 泰彰森 浩二小林 雅彦岡本 幸大安良 興西谷 江平岡 徹榊間 春利中村 孝志
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抄録
【目的】骨軟骨移植術(AOT)は限局した関節軟骨病巣部を正常な骨軟骨プラグで置換する手術である。筆頭演者らはAOTの動物実験結果をAmerican Journal of Sports MedicineArthritis Research & Therapyに報告しているが、理学療法がどうあるべきかについては提案していない。今回、臨床でヒトに行われるAOTと同様の手術を家兎に行い、超音波装置を用いて関節軟骨の硬度、表面粗さおよび厚さ指標を測定したところ術後の理学療法を進める上で重要な新知見を得たので報告する。
【方法】所属大学の動物実験委員会の承認を得て体重3.0~3.6kgの日本白色家兎36羽72膝を研究に用いた(承認番号:Med 04202)。ネンブタール麻酔下に関節切開し左膝蓋大腿関節に直径5mm深さ7mmのレシピエント孔を作製した。右膝の同部位から直径6mm深さ7mmの骨軟骨プラグを採取し、左膝のレシピエント孔に移植した。術後は通常ケージで飼育し荷重制限を設けなかった。術後2、4、8、12、24および52週で膝を摘出し、肉眼観察、超音波測定およびsafranin-O染色して組織を観察した。超音波測定の結果はクラスカルワリス検定および多重比較(Holm法)を用いて比較した。
【結果】肉眼観察では、全てのプラグ軟骨には光沢があり表面は滑らかであった。組織学的には、いくつかの標本にプラグ軟骨のカーブおよびわずかな沈下を認めたが、プラグ軟骨を覆う組織はなんら認めなかった。またプラグ生着はすべて良好であり、組織標本のsafranin-O染色性は保たれていた。術後2、4、8、12、24および52週のプラグ軟骨の硬度指標は2.17±0.75(平均±標準偏差、相対値)、2.04±1.46、1.23±0.63、1.01±0.67、1.95±1.10および3.94±2.96であり、52週では8週および12週と比較して有意に高値を示した(P < 0.01)。周辺軟骨に対するプラグ軟骨部の硬度指標(%硬度指標)は術後2、4、8、12、24および52週においてそれぞれ77.5%、77.3%、58.7%、83.9%、102.7%ならびに196.3%であった。表面粗さと厚さの各指標には有意差は認めなかった。
【考察】%硬度指標は術後8週まで一時的に低下を来すが24週で100%を超え、52週で約2倍に増加する。このエビデンスはAOTによって軟骨硬度が十分回復することを示唆している。
【まとめ】家兎とヒトでは異なるが、%硬度指標が低下している期間はAOTの術後理学療法に注意が払われるべきである。%硬度指標が上昇に転じてからは運動量を増すことができると推察される。本研究はArthroscopyに投稿中(in revision)である。
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© 2007 日本理学療法士協会
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