理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1261
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理学療法基礎系
足趾伸展機構とアーチ高率についての検討
*割鞘 徹明屋宮 幸恵内村 良二川越 大輔川勝 裕美
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抄録

【はじめに】
足趾及び足底機能の役割は転倒予防の観点から注目され、立位姿勢保持や転倒との関連性が報告されている。その中で、足趾把持筋力は動的姿勢制御能に関与しているとの報告が多くあり、足趾把持筋力は足部のアーチ高率や足趾屈曲柔軟性との相関があるといわれている。しかし、ウィンドラス機構では足趾を伸展させる事でアーチが向上するとあるが、足趾伸展筋力、伸展柔軟性などの足趾伸展機構とアーチ機能についての報告は少ない。そこで、本研究では足趾伸展機構とアーチ機能との関係性に着目し研究、検討を行った。
【方法】
対象は、下肢に病的機能障害が認められなかった健常成人31名(平均年齢24.0±2.0歳、身長164.6±9.3 cm、体重59.6±12 kg)とした。対象者には、事前に研究の主旨を説明し、同意を得た。測定項目として、母趾伸展筋力は徒手筋力計PowerTrack2(日本メディックス社製)を用い、膝90°屈曲、足関節中間位にて母趾のみを伸展させた値を体重比で算出した。母趾伸展柔軟性は立位で母趾球を接地させた状態で、母趾を最大伸展させ床との距離を足長比で算出した(以下、伸展柔軟性)。アーチ高率については、舟状骨粗面から床面までの垂線の長さを第1長中足骨底内側から踵骨接床最後部までの長さを除した値とし、静的立位での状態(以下、静的アーチ高率)と、ウィンドラス機構を働かせた状態でのアーチ高率(以下、足趾伸展アーチ高率)を各々測定した。
【結果】
母趾伸展筋力は、右0.049±0.017kg、左0.048±0.014kg、伸展柔軟性は、右23.7±3.4、左23.7±3.5、アーチ高率は、右27.5±4.8、左27.4±4.8、足趾伸展アーチ高率は、右36.5±5.4、左37.0±5.2であった。伸展柔軟性と母趾伸展筋力には、右r=0.240、左r=0.303(P<0.05)と弱い正の相関がみられた。静的アーチ高率と伸展柔軟性、また静的アーチ高率と足趾伸展筋力には相関がみられなかった。伸展柔軟性と足趾伸展アーチ高率には右r=0.447(P<0.05)、左r=0.363(P<0.05)と相関がみられた。アーチ高率の増加した値(足趾伸展アーチ高率と静的アーチ高率の差)と伸展柔軟性には、右r=0.553(P<0.01)、左r=0.516(P<0.01)と相関がみられた。
【考察】
静的アーチ高率が高いとバランス能力が向上するといわれているが、今回注目した足趾伸展機構は、静的なアーチとの相関がみられなかった。そのため伸展機構と静的バランスとの関係性は低いと考えられる。しかし、伸展柔軟性と足趾伸展アーチ高率とでは相関がみられた。ウィンドラス機構は、歩行において踵離地時から足趾離地時の踏み切りに関連する応力を受け入れるための前足部の安定性に関わると言われている。よって今回の結果から、足趾伸展柔軟性は前足部の安定性に関与すると示唆され、歩行時の推進力の増加、安定した歩行の獲得へ繋がると考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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