理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1263
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理学療法基礎系
歩行周期中に観測される生体時系列データの特性
*唐牛 大吾萩原 礼紀
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抄録

【はじめに】
一般に生体から観測されるデータは生体時系列として扱われ、その多くは「指数特性」を示すとされている。今回、健常成人の自由歩行中の動作加速度を測定した。このデータをMemCalc法を用いて解析したところ、歩行周期中の上下方向加速度に特異な動作特性が検出されたので報告する。
【対象】
身体機能に問題がない健常成人男性20名、女性15名。平均年齢27.4±6.3歳、平均身長165.2±12.4cm、平均体重58.1±14.1kgであった。本研究の意義・目的・方法を説明し同意の得られた者とした。
【方法】
携帯型3次元加速度計(Activtracer AC301:ACT,GMS社)をJacoby line中央に付属のベルトで固定し、20mの平地歩行路上を自由歩行している際の身体の加速度を測定した。AcC3xA.exe(処理プログラム)にて処理し、Microsoft Excelを用いてグラフ化し、X軸を時間、Y軸を加速度として表示した。歩行が定常化する歩行開始3歩目以降の1歩行周期を採用した。歩行周期における各相を同定し、各軸の加速度をMemCalc法により解析した。踵接地(H.S)から足底接地(F.F)およびF.Fから対側H.Sの2区間をMemCalc法を用いて、パワースペクトル解析を行った。H.SからF.Fまでの区間は、採取されたデータ点数が少なく解析困難なため、擬似した同様の傾きを有するデータによる解析を行った。
【結果】
上下方向に特徴的な波形が検出された。上下加速度はH.Sから下降を示し、0.09±0.018秒後に0.22±0.06Gの上昇を示した後、再度下降しH.Sから0.15±0.054秒後にF.Fに達した。自由歩行にも関わらず、その区間時間は被検者間でほぼ同時期に観察された。その後、加速度は上昇を示し、対側H.Sまで0.39±0.089秒間を要し、そのばらつきは他の区間と比して大きく認められた。
【考察】
H.S後の加速度上昇は、対側の足趾離地(T.O)を捉えたものであると考えられた。測定課題が自由歩行にも関わらず、H.SからF.Fまでの区間時間は被検者間でのばらつきが少なく収束していたことから、随意的制御の関与の少ない機械的過程であると考えられた。また、波形形状から異なる「系」を含まない「べき特性」であることが示唆された。この区間において、H.Sによる固有感覚受容器への刺激入力が起点となり、F.F時に速やかに筋出力発が揮出来る準備をしていると考えられた。H.SからF.Fにかけては自動的に制御された過程であることが示唆された。これは、F.Fから対側H.Sまでの、個々の筋力や平衡機能や歩行速度などに反映された随意的制御とは異なるものであると示唆された。
【まとめ】
一般的に生体時系列は指数特性を示すことが多いとされているが、運動制御の過程には、「べき特性」を示す機械的なプログラムを包含し効率の良い身体制御を構築していると考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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