理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1265
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理学療法基礎系
高齢者の二重課題(dual task)能力低下と関連する因子について
*池添 冬芽浅川 康吉島 浩人市橋 則明
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キーワード: 高齢者, 二重課題, 認知機能
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抄録

【目的】異なる複数の作業を同時に遂行する能力、すなわち二重課題(dual task)に対する対応能力が加齢により低下すると、生活能力低下や転倒を引き起こす危険性が高くなることが指摘されている。しかしながら、加齢によってどの程度二重課題能力が低下するのか、また高齢者の二重課題能力にはどのような因子が関与しているのかについては明らかではない。本研究では高齢者および若年者の二重課題能力を評価し、加齢による二重課題に対する対応能力低下とこれに関連する因子について検討した。
【方法】対象は本研究に同意が得られた養護老人ホームに入所している高齢女性24名(平均年齢81.9±6.7歳)および若年女性12名(平均年齢23.0±4.1歳)であった。single taskテストとして下肢の敏捷性を評価するステッピングテストを実施し、座位にてできるだけ速く足踏みできた回数を20秒間測定した(single ステッピング)。dual taskテストとして、このステッピングテストを暗算での引き算をする課題と同時に行った(dual ステッピング)。運動機能として膝伸展筋力、Functional reach(FR)、Timed Up&Go(TUG)を測定した。認知機能の評価として、Mini-Mental State Examination(MMSE)、改訂長谷川式簡易知能スケール、コース立方体テスト、Frontal assessment battery(FAB)を実施した。高齢女性と若年女性それぞれにおけるsingle ステッピングとdualステッピングの比較を対応のあるt-検定にて行った。また、高齢女性のsingle ステッピングに対するdual ステッピングの相対的低下率を求め、各運動機能・認知機能とのピアソンの相関係数を算出し、有意性の検定を行った。
【結果と考察】若年女性では、single ステッピングが190.0±17.4回、dualステッピングが182.5±13.8回(低下率3.5±7.9%)であり、single とdual ステッピングとの間に有意差は認められなかった。一方、高齢女性ではsingle ステッピングが103.4±36.7回、dual ステッピングが68.5±42.1回(低下率33.1±25.3%)であり、dual ステッピングは有意に低い値を示した。single ステッピングに対するdual ステッピングの相対的低下率と各項目との相関をみると、運動機能項目の中ではFRとのみ有意な相関が認められ(r=0.51)、single ステッピングや膝伸展筋力、TUGとは相関がみられなかった。また認知機能項目の中ではFABのみdual ステッピングの低下率との有意な相関が認められ(r=0.41)、高齢者のdual task能力低下にはFABで反映される前頭葉機能が関連していることが示唆された。

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© 2007 日本理学療法士協会
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