理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 12
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神経系理学療法
慢性脳卒中片麻痺患者に対する全身振動(Whole Body Vibration)トレーニングの効果
*梛野 浩司高取 克彦徳久 謙太郎宇都 いづみ生野 公貴岡田 洋平奥田 沙代子鶴田 佳世竹田 陽子松田 充代小嶌 康介古手川 登矢倉 一庄本 康治嶋田 智明
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抄録

【目的】全身振動(Whole Body Vibration : WBV)トレーニングは振動するプラットホーム上で立位を保持するトレーニング方法である。近年、下肢の筋力増強のための運動介入として注目されている。先行研究では健常成人や高齢者に対して下肢筋力増強効果やバランス機能改善について報告されている。しかし、脳卒中片麻痺患者に対するWBVトレーニングの効果についての報告は少ない。そこで本研究は慢性脳卒中片麻痺患者に対するWBVトレーニングの効果について検証した。
【方法】当院入院中の発症から5ヶ月以上経過した慢性脳卒中片麻痺患者のうち、意志疎通が可能で何らかの方法で10_m_以上歩行可能なもの30名(男性18名、女性12名)を対象とした。彼らをWBV群15名、コントロール群15名に分け、WBV群には通常理学療法の時間内に1分×5セットを1セッションとしたWBVを3セッション/週の頻度で4週間行った。WBVはNovotec Medical社製振動刺激トレーニング装置G-900を用いて行い、。コントロール群は通常理学療法を4週間行った。測定項目はFugl-Meyer(FM)下肢、Berg Balance Scale(BBS)、Functional Reach Test(FRT)、Hand Held Dynamometerを用いて麻痺側および非麻痺側の膝伸展筋力、10m歩行時間とした。測定時期は介入前、介入2週後、介入終了時に各項目について測定した。統計解析は2元配置反復測定分散分析にて群×測定時期について解析を行った。交互作用が認められた場合にはそれぞれについて単純主効果を求めた。
【結果】FM(F=8.544、p=0.0006)、BBS(F=7.077、p=0.0018)、FRT(F=4.846、p=0.0115)でそれぞれ交互作用を認めた。各項目の単純主効果を分析した結果WBV群においてFM(p=0.0007)とBBS(p=0.0025)について介入前と比較して介入終了時に有意な改善を認めた。しかしFRTにおいては統計学的に有意差を認めなかった。麻痺側、非麻痺側の膝伸展筋力と10m歩行時間については有意な交互作用は認められなかった。群と測定時期についての主効果を分析すると非麻痺側膝伸展筋力においてのみ測定時期の主効果(F=4.154、P=0.0208)を認めた。
【考察】慢性脳卒中片麻痺患者に対してWBVは麻痺側下肢に振動刺激を加えることにより固有感覚を刺激しFMのスコアに影響を与えたと考えられた。また、足底部を刺激することにより姿勢コントロールに影響を及ぼし、結果的にBBSスコアの改善につながったものと考えられた。WBVはプラットホーム上で立位を保持するだけのトレーニング方法であり、慢性脳卒中片麻痺患者に対して簡便で有益なトレーニング方法であると考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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