理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 137
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神経系理学療法
当院回復期リハビリテーション病棟における脊髄損傷者の動向について
*松村 彩子堀 竜次稲村 一浩平木 治朗
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抄録
【目的】平成18年の診療報酬改定により、脊髄損傷者(以下、脊損者)の算定期間は180日に制限された。しかし、脊損者の入院期間は長期間に及ぶことが多く、全国の病院・センターにおいて頸損者が1年近く入院していることも少なくない。当院においても脊損病棟から回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)に移行し、脊損者の入院期間の短縮に対応している。そこで、今回新たに短縮された算定期間内における脊損者の在宅復帰の可能性について調査を行ったので報告する。【方法】平成16年6月1日から平成18年6月1日までに回復期病棟に入棟した脊損者77名(男性60名、女性17名、年齢47.9±20.5歳)を対象とした。調査項目は残存レベル・受傷機転・入院目的・転帰・在院日数・回復期病棟日数・排尿排便方法・カンファレンスの有無・社会資源利用の有無・入退院時ADLとした。【結果】脊損者77名の残存レベルは頸髄完全損傷(以下、頸損完全)20名、頸髄不全損傷(以下、頸損不全)25名、胸腰髄完全損傷(以下、胸腰損完全)10名、胸腰髄不全損傷(以下、胸腰損不全)22名であった。受傷機転は交通事故32%、転落23%、転倒13%と上位3項目で約7割を占めていた。入院目的はリハビリ目的60%、救急搬送35%であり、リハビリ目的の大半が入院前判定会議を受けていた。転帰については在宅79%、転院16%、施設転所5%であり、在宅復帰の約6割は入院前判定会議を受けていた。総在院日数と回復期病棟日数では、頸損完全196.8±56.2日(回復期病棟:160.4±35.4日)、頸損不全115.1±40.0日(95.2±42.1日)、胸腰損完全110.2±28.6日(99.2±28.1日)、胸腰損不全134.9±56.2日(117.6±53.0日)で、ほぼ算定期間内に退院となっていた。排便管理はトイレ排便自立37%、トイレ自己摘便自立19%、トイレ介助19%、ベッド上介助摘便25%であり、重症なほどベッド上での介助摘便処置を行っていた。排尿管理は自尿自立32%、CIC自立34%、自尿介助6%、CIC介助6%と続き、膀胱皮膚瘻も13%を占めた。膀胱皮膚瘻を増設した多くが高齢かつ重度の頸損者であり、その大半が在宅へ退院されている。カンファレンスは実施65%、病状説明のみ35%であり、全体の49%が入院中に身体障害者手帳を申請していた。頸損不全および胸腰損不全47例における動作能力の回復程度(入院時→退院時)については、全介助41%→4%、車椅子介助34%→6%、車椅子自立19%→17%、屋内歩行自立4%→26%、屋外歩行自立2%→47%となり、移動能力の向上を認めた。【考察】上記の結果に、当院の脊損者に対する回復期病棟のシステムを紹介するとともに、今後の課題を検討して報告する。
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© 2007 日本理学療法士協会
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