理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 715
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神経系理学療法
慢性期脳卒中片麻痺患者へのマイオチューニングアプローチの試み
歩行能力の解析
*朝妻 恒法兒玉 隆勧藤本 一美田中 真一岡 大樹藤末 美枝藤崎 浩木下 沙希子下畑 博正中野 昭二
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抄録

【目的】マイオチューニングアプローチ(以下MTアプローチ)は、徒手により筋緊張や痛みの抑制を行い、関節可動域や歩行動作など日常生活動作を向上させるものである。今日、MTアプローチについては、痛みの軽減や可動域の改善など多数の報告が成されているが、歩行動作、特に中枢神経障害の歩行動作に対するMTアプローチの効果についてはまだ報告が少ないようである。今回、慢性期脳卒中片麻痺患者にMTアプローチを施行し、その歩行動作に変化があるかどうかを解析し、若干の知見を得たのでここに報告する。

【方法】脳卒中左片麻痺患者1名(以下症例1)、右片麻痺患者1名(以下症例2)、計2名(すべて男性)。下肢ステージは症例1が3、症例2が4で、上肢・手指は症例1が3、症例2が5である。年齢は症例1が78歳、症例2が63歳、高次脳機能障害がなく歩行可能なもの(杖、平行棒内歩行も可)とした。治療前後に3次元動作解析装置(ピークモータスバージョン8)にて、各歩行周期の股・膝・足関節の角度を計測。また、筋電図(ノラクソン社マイオクリニカル)により、大殿筋・中殿筋・大腿直筋・腓腹筋の積分値を計測した。MTアプローチは、腸腰筋、殿筋、下腿三頭筋、足指屈筋群・伸筋群に行った。歩行速度も計測した(5m)。

【結果】患側下肢の3次元動作解析結果は、遊脚期で股関節・膝関節の屈曲角度が増加した。筋電図結果は、全ての筋において積分値が増加した。歩行速度結果では、症例2において5mで18秒が10秒に短縮した。

【考察】結果より、遊脚期の股関節・膝関節の角度、積分値、症例2の歩行速度に変化が見られた。高田らによると、本来MTアプローチは、痛み、痺れ、筋緊張、運動機能が顕著に改善するとともに、筋力及び最大収縮時の筋電図積分値が顕著に向上すると言われている。よって、今回の研究では、腸腰筋、殿筋、下腿筋群にMTアプローチを施行し筋調整が行え、各筋の筋活動が増し、股関節と膝関節の屈曲角度が増加し、振り出し速度も上昇し、歩行速度も短縮した。また、症例1の歩行速度に変化がなかったが、下肢の関節角度変化を確認しながらの歩行であったためである。症例2の股関節屈曲は減少しているが、腸腰筋へのMTアプローチを行ったために、筋調整ができ体幹が起き上がったためである。
このように、MTアプローチを行うことにより、慢性期脳卒中片麻痺患者の歩行を改善するのに有効と思われる。

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© 2007 日本理学療法士協会
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