理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 741
会議情報

神経系理学療法
回復期脳卒中患者におけるトイレ動作能力とFBS下位項目の関係
*宮本 真明工藤 大志大森 圭貢鈴木 誠杉本 諭斉藤 和夫斉藤 祐美子梅木 千鶴子藤井 ゆう子宮本 恵木之下 由夏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】トイレ動作の自立は脳卒中患者およびその家族のニードが高いADL動作のひとつであり、臨床においても目標となる頻度の高い動作である。一方、トイレ動作は立位での下衣操作に必要なバランス能力を要求され、トイレ動作自立度の判断に苦慮することがある。Functional Balance Scale(FBS)とADLとの関連についての研究では、ADL能力の指標にFunctional Independence Measure(FIM)の合計点を使用していることが多く、トイレ動作との関連については明らかではない。本研究の目的は、回復期脳卒中患者を対象に、FBS以外の要因も加味した上で、トイレ動作能力とFBS下位項目の関連、およびトイレ動作の規定因子について検討し、実生活でのトイレ動作の自立度予測を試みることである。

【方法】対象は当院回復期病棟に入院した脳卒中患者71例で、年齢67.1±13.5歳、男性47名、女性24名、診断名は脳梗塞49名、脳出血15名、その他7名であった。トイレ動作能力の評価はFIMにしたがって評価し、自立(FIM6,7点)と非自立(FIM4,5点)の2段階に分類した。尚、FBSの検査施行に困難を来たすような著しい高次脳機能障害や認知症を有するものは除外し、対象患者には本研究の趣旨を説明し同意を得て行った。
分析方法は、1)トイレ動作能力と年齢、麻痺側、上肢・手指・下肢Br-stage、FBS合計得点、FBS下位項目得点についてχ2検定およびMann‐WhitenyのU検定を用い比較した。2)次に2群間で有意差の認められた変数を独立変数、トイレ動作能力を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。なお、FBS合計得点と下位項目得点には高い相関関係が予測されたため、FBS合計得点は独立変数に含めなかった。3)算出されたトイレ動作の規定因子から実際の生活におけるトイレ動作自立度を予測するための閾値と判別精度の関係を検討した。統計的有意水準は危険率5%以下とした。

【結果】単変量分析により、上肢・手指・下肢Br-stage、FBS合計得点、および坐位保持を除くFBSの13下位項目にて有意差が認められた(p<0.01)。ロジスティック回帰分析で最終選択された変数は「着座」と「360°回転」であった(p<0.01)。以上の2変数をトイレ動作の規定因子とした場合の自立度予測の閾値は、FBSにて「着座が4点且つ360°回転が1点以上」とした場合、最も高い感度(88.6%)および特異度(74.1%)が算出され、陽性適中率は84.8%、陰性適中率は80%と高い判別精度であった。

【考察】回復期脳卒中患者のトイレ動作はバランス能力との関連が強く、FBSはトイレ動作自立度を予測する上でも有用な検査であることが示唆された。FBS下位項目の中で「着座」と「360°回転」がトイレ動作の自立度を予測する有用な因子であり、その判別は「着座が4点且つ360°回転が1点以上」を目安にすることが適していると考えられた。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top