理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 743
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神経系理学療法
急性期被殻出血例の基本動作能力の予測
ディシジョンツリーを用いた検討
*高倉 保幸高橋 佳恵大隈 統中村 紋子藪崎 純小野塚 直子山本 満松井 彩乃陶山 哲夫
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抄録

【目的】我々は重回帰分析を用いた研究により、急性期被殻出血例の機能的予後を予測する初期情報としてはCT分類と独自に考案した脳浮腫ステージが重要であることを昨年度の本学会にて報告した。初期情報として有用な初期情報は明らかとなったが、重回帰分析を用いた予測式は細かな係数を利用するため臨床で簡便に活用することは困難であった。今回はより臨床的に利用できる予測法を算出するためにディシジョンツリーを用いた検討を行った。
【方法】対象は当院にて初回発症で理学療法を行った被殻出血47例とした。年齢は60.1±10.7歳(平均±標準偏差)、性別は男性32例、女性15例であった。予後予測の因子として抽出した初期情報は、年齢、性別、CT分類、総出血量、出血径(長径)、脳浮腫ステージ、麻痺側、発症時JCS、発症翌日JCSとした。CT分類は有意な直線相関関係が得られることを確認し順位尺度として利用した。脳浮腫の判定は独自に3段階の評価基準を作成、いずれのレベルでも脳溝の狭小化がみられないものを1、脳溝の狭小化がみられるものを2、モンロー孔のレベルから3cm上部での病巣側の脳溝が消失しているものを3とした。基本動作能力の判定には11項目からなる改訂された機能的動作尺度(以下FMS)を用いた。FMSの検査時期は21.9±2.0日であった。統計学的解析にはClementine 8.1におけるClassification and Regression Treesを用いた。最大代理変数は5、不純度の最小変化は0.0001、カテゴリ変数目標値の不純度はGini測度、枝葉中あたりの最小レコード数は3とした。
【結果】第1層はCT分類で分割された。ステージII以下がノード1となり、症例数が11例で予測FMSが35点、III以上がノード2となり症例数が36例で予測値FMSが9点となった。第2層はノード2からCT分類で分割された。ステージIVa以下がノード3となり症例数が25例で予測FMSが12点、ステージIVb以上がノード4となり症例数が11例で予測FMSが2点となった。第3層は年齢で分割された。60歳以下がノード5となり症例数が13例で予測FMSが18点、61歳以上がノード6となり症例数が12例、予測FMSが5例となった。第4層は浮腫ステージにより分割され、ステージ2以下がノード7となり症例数が10例で予測FMSが21点、ステージ3がノード8となり症例数が3例で予測FMSが7点となった。
【考察とまとめ】ディシジョンツリーを用いた検討により、CT分類、年齢、浮腫の順にみていくという、臨床で簡便に利用できる予測法を考案することができた。重回帰分析を用いた検討では抽出されなかった年齢が抽出された理由としては、年齢がFMSに対し直線相関を示すのではなく、予備能が減少する年齢から急に回復が悪くなるためと考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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