理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1306
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神経系理学療法
パーキンソン病患者のバランス障害
Berg Balance Scaleを用いた検討
*鎌田 理之橋田 剛一加藤 直樹井上 悟松尾 善美阿部 和夫
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抄録
【目的】ADL障害が軽度である時期のパーキンソン病(PD)患者での理学療法は予防的な介入が中心となる。中等症までのPD患者のバランス能力に着目し、その障害の特徴と早期介入の必要性について検討したので報告する。
【方法】PD患者15名(年齢63.1±10.2歳、男性7名、女性8名)、コントロール群として運動失調症(ataxia)患者6名(年齢58.3±10.9歳、男性2名、女性4名)を対象とした。両群ともリハビリ場面での室内独歩が自立レベルであった。PD患者の重症度は、Modified Hoehn-Yahr分類(mH-Y)で2から3(2: 7名、2.5名: 3名、3: 5名)、Unified Parkinson's Scale Rating Scale motor score part III(UPDRSIII)では平均19.8±9.9 (7-39)であった。両群のバランス能力の調査には、Berg Balance Scale(BBS)を使用した。統計処理にはSpearmanの順位相関係数、Mann-Whitney U検定を用いて、p<0.05を有意とした。
【結果】両群において性別、年齢に有意差を認めなかった。BBSはPD群で51.7±4.5(43-56)点であり、mH-YおよびUPDRSIIIの各々と有意な相関を認めた(r=-0.57: p=0.03、r=-0.70: p<0.01)。BBSはataxia群で50.8±3.1(47-54)点となり、合計点数でPD群と有意差を認めなかった。BBSの下位項目では、項目11(360°方向転換課題)の点数はPD群でataxia群より有意差(p<0.01)をもって障害が認められたが、項目14(片足立ち課題)の点数はataxia群で有意差(p=0.01)をもって障害が認められた。
【考察】今回の検討から、中等症までのPD患者では、姿勢反射障害に加え、機能的バランス能力が低下していくことが明らかとなった。さらに、PD患者のバランス障害はataxia患者とは異なり、左右重心移動や支持基底面の狭小ではなく、方向転換課題でより強調されることも示された。PD患者の転倒は、姿勢反射障害が出現し始めるmH-Yの2、3の時期に最も多く、転倒予防には、方向転換時のバランス障害を特に意識して、早期からトレーニングを取り入れることが有用と考えた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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